研究課題/領域番号 |
19K02280
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
永嶋 昌樹 日本社会事業大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80439009)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | FGPマネージャー / FGPコーディネーター |
研究実績の概要 |
里孫活動は高齢者と子どもとによる個別的かつ継続的な世代間交流活動である。わが国においては教育または福祉分野の世代間交流活動として捉えられており、活動に参加する高齢者と子どもとはどちらも金銭的な報酬を受けていない。一方で、米国では以前より公的な活動としてのFoster Grandparent Programが行われている。これは低所得層の高齢者が、発達上あるいは社会環境の上で課題を有する子どもをサポートする、法に基づいた有償ボランティア活動である。高齢者の所得補償ばかりでなく、社会的役割の創出、閉じこもり防止、意欲の向上に寄与している。また、子どもとその家庭にとっても、学力を含め児童期のさまざまな課題を解決するために重要な活動となっている。 研究の2年目は、Fosfer Grandparent Programの実態を把握し、わが国の里孫活動との比較検討を行うために現地に赴き、数か所の機関の実施状況を調査する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響により渡航が困難となったことから、複数の実施機関の活動状況をWebにより調査した。 新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い外出が制限され、FGPの活動が一時的に停止されたため、活動に参加していた低所得層の高齢者の社会的な孤立と、収入の低下が懸念されたが、各機関ではFGPマネージャーやFGPコーディネーターが中心となり、高齢者宅を訪問したり、手当てを支給する等の対策を講じていた。 なお、活動が停滞する中においても、Foster Grandparentとなる高齢者とそのパートナーとなる子どもとがオンラインでつながる取り組みが試行される等、感染症蔓延下での新たな方法が模索されている様子もうかがえた。もっとも、Webによる調査のみでは個別事例を詳細に調査することは難しく、あくまでも概略的な動向を掴むに留まったことを申し添える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
里孫活動は高齢者と子どもとが個別的にかかわる世代間交流活動であることから、密の状態になりやすく、また、地域の中とはいえ人々の動的な流れを作り出している。新型コロナウイルス感染症の蔓延以前より、高齢者と子どもの双方へのインフルエンザの罹患を防止するため、また、施設内感染を起こさないために、概ね11月から翌年3月頃までは活動が行えないような状況にあった。特に近年ではこの傾向が強く、活動期間が限られている。 これに加え、2020年1月以降は新型コロナウイルス感染症の蔓延により、それ以外の期間においても、国内での活動の休止が余儀なくされた。また、渡航による現地調査を予定していた米国においても、Foster Grandparent Proguramの状況は概ね同様であり、現在に至っている。以上が、研究が遅れている最大の原因である。 里孫活動のような世代間交流活動は、人と人とが触れ合い、親密な交流を行なうことによって、人間の発達上の諸課題を解決するという効果が期待できる活動であるため、実際の活動に接することなく効果を検証することは困難である。 以上の理由から、国内の里孫活動の参与観察と米国のFGPの実地調査を行う当初の研究計画は、新たな方向に修正する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
原則として、遅れている当初の研究計画を後倒しで行う予定であるが、今後の新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言等の状況をみて適宜修正する。各地で実施されている里孫活動が、今後も本来の形式で行われないようであれば、里孫活動の実施機関等を対象に、実情と課題についてオンライン形式による調査を検討する。 米国でのFGPの実態調査についても、同様の方法による代替措置を検討する。 また、施行事業は上述の調査を踏まえて行うことになっていることから、当初の計画期間内での実施が難しいと考えられる。今年度の後半に短期間で、感染防止対策をしながら可能な範囲での実施を試みることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は里孫活動を実施している機関に出向き、活動について参与観察等の調査を行うことと、米国におけるFGPの実地調査を行う計画であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症蔓延による影響で、これらの調査を行うことが困難であった。そのため、実施機関への謝金と渡航費用等を使用することができず、次年度使用額が生じることとなった。次年度においては社会の情報を精査し可能な限りは当初の計画を後倒しにして使用する予定である。 また、当初の計画の実施が困難な場合は、オンライン等の活用による代替措置を取り、その謝金や分析に関わる人件費等に充てる予定である。
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