研究課題/領域番号 |
19K02280
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
永嶋 昌樹 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 准教授 (80439009)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スウェーデン / 家族機能 / 世代間交流 |
研究実績の概要 |
当初の計画では、当該年度において海外の世代間交流に類すると考えられる活動の実態を調査するために、実際に現地に赴く予定であった。具体的には、米国において実施されているFoster Grandparent Programの調査である。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行・蔓延の影響により、実行することが困難であった。 そのため、代替手段として、ユニットケアの導入等でわが国の介護施策にも影響を与えているスウェーデンの高齢者福祉について、世代間交流・異世代交流を視点に文献調査を行った。その結果、既に18世紀の頃から必ずしも老親を扶養するという義務はなく、農園等の財産を相続する者が扶養していたことを指摘する文献がある一方で、老親が成人した子どもと共に暮らすという家族規範が存在していたものの、徐々に核家族という家族形態が制度化・固定化されていると考えられていったことにより、家族機能が注目されなかったとする説も存在した。これらはそれぞれ見解が異なるものの、家族・親族による介護が基本ではないという文化を垣間見ることができるという点においては共通しているといえる。また、2000年代初頭の子どもとの同居率が約4%であったこと、現在では65歳以上の高齢者の3人に1人が独居であること等は、その状況を如実に表しているといえる。 ただし、このような経緯歴史的経緯や、施設入居率や独居率が高いという現状があっても、一概に世代間交流が十分に行われていないと判断することはできない。子や孫等の世代と同居していない場合でも、いわゆる「近居」という形態で日常的な交流が行われている場合も考えられるからである。現時点では文献調査のみであり、この点を詳細に調査するには至っていない。これらはあくまでも、スウェーデンという一国の状況を概観したに過ぎないが、今後の世代間交流のあり方を模索するための参考となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究テーマである「里孫活動」を含む世代間交流活動自体が中止されている状況が続いていたことにより、国内における里孫活動の効果検証(研究1)を行うことが実質的に困難であった。また、海外渡航にも制約があったため、当初に計画していた海外の世代間交流活動(里孫活動)の類似制度(米国のFoster Grandparent Program)を現地で視察・調査するという当初の研究計画(研究2)を変更せざるを得ない状況であった。 既に研究期間が限られていることから、すべてを当初の研究計画どおりに遂行することは困難となりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の目的である、高齢者の社会的孤立や若年層コミュニケーション能力の低下等の社会的な課題を同時に解決する手段としての「里孫活動の有効性を実証的に検証し、高齢者と子どもとが疑似的・擬制的な祖父母・孫関係を結ぶ地域共生社会の構築モデルを提唱することで、新たな地域コミュニティの基盤づくりに寄与する」ために、規模を縮小して計画を実行していく予定である。一般に高齢者施設や小学校等の施設建物内など、原則として屋内・室内で行われている里孫活動の活動形態を見直し、屋外で行うことができる世代間交流活動を試行してその効果を検証する。 これは、当初の研究計画である既存の里孫活動の効果検証(研究1)と、米国のFoster Grandparent Programの調査研究(研究2)との「結果を踏まえた有効な世代間交流プログラム(案)を作成し、施行事業として里孫活動をこれまでに行っていない地域・施設等において実施する。施行事業の事前・活動期間中・事後に参加者である高齢者と子どもとに書面あるいは面接による調査を行い、既存の里孫活動と同様の結果が得られるかを検証することにより、効果的なプログラムの要因を明らかにする」という施行事業および研究3を見直すものである。コロナ禍後という現在の状況で実施可能な研究活動に変更する。具体的には、園芸や農作業による高齢者と子どもとの交流活動を行い、その活動が参加者個人や地域社会にどのような影響を及ぼしているかを検証する。 また、状況が許せば、研究2についても規模を縮小して実施を目指すこととする。 なお、わが国において新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が変更されたことから、直接対面による交流活動が行われる機運が戻りつつあるものの、里孫活動が従前のように行われるようになるのはさらに先であると推測される。そのため、研究1の実施は、現状では困難であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行・蔓延の影響により、海外調査である研究2は実施することが困難であったため、そのための渡航費等は使用できなかった。次年度において可能であれば、海外での調査研究を規模を縮小して実施する。その場合は渡航費・現地滞在費として使用する。 また、試行事業及びその効果検証である研究3は、当初の計画であった研究1と研究2を踏まえて実施する予定であった。研究1の継続は困難であるが、試行事業とその検証については、実施形態・内容を見直して次年度に実施する。当初の想定である屋内での活動ではなく、屋外にて園芸・農作業を介して世代間交流の試行事業を行うため、その活動に関わる最低限の物品は購入する必要がある。具体的には農具や種苗等であるが、これらはあくまでも世代間交流をするために使用するツールであることを申し添える。 なお、施行事業に参加する高齢者、子ども、ボランティア等の個人に影響を与える効果や、地域資源の交流効果を検証するための調査費用等については特に変更なく使用する予定である。
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