研究課題/領域番号 |
19K02368
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
日下部 裕子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (90353937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 味覚 / 嗜好 |
研究実績の概要 |
本研究は、苦い野菜に調味料を添加することで食べやすくするといった、味付けの長所の科学的根拠を示すことを目的としている。味の混合による嗜好性の改善が、味の情報伝達過程においてどのような作用機序で起きるかの解明を試みる。また、味付けによる嗜好性の改善が生体に及ぼす影響を明らかにするために、味付けが食品成分の消化吸収にどのように影響するかを調べることを具体的な目的とする。味質としては、学術的な裏付けが豊富な甘味を中心に、低嗜好の味への甘味の混合による味の認識過程の変化の検討、甘味の付与による食品機能性成分の吸収効率変化について、ヒトとマウスを用いた研究を行う。本年度は、ヒト研究として酸味に甘味を添加した場合の酸味と甘味の強さの変化を数値化した。農産物をモデルにした酸味溶液は、甘味の添加により酸味の強さが低減することを数値化して示すことができた。また、基本味刺激時の唾液中アミラーゼ濃度を測定したところ、酸味、苦味のような嗜好性の低い味の刺激時にアミラーゼ濃度が上昇することを観察した。唾液中アミラーゼはストレスの指標であることから、嗜好性の低い、すなわち「まずい」味を評価する指標として唾液中アミラーゼが使える可能性を示した。現在、酸味に甘味を添加した溶液で刺激時の唾液中アミラーゼ濃度変化の解析を行っている。マウスを用いた動物実験ついては、甘味、酸味、甘味と酸味を混合した溶液を用いた同時刺激を行い、刺激後に脳の摘出を行った。現在、情報伝達への影響を明らかにするために、脳の組織染色を行って、神経細胞活動の指標であるc-Fos発現を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度分については、ヒト試験により嗜好を評価する指標を得たこと、マウスを用いた実験により複数の味の混合が嗜好に与える影響の解析を行ったことから、ほぼ計画通りに研究を遂行できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降については、ヒト試験のうち、特に唾液を用いた研究が困難になることが予想される。ヒト試験については、遠隔でもできる内容に変更して対応する必要がある。また、唾液を利用した試験は動物実験を拡充して対応するなどの変更が必要になる可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金について、計画していた規模の人数を集められなかったため、残額が生じた。次年度以降も今までと同様のヒト試験を行えるかどうかは不明であるが、代替法としてのアンケート調査を行う可能性があり、そのための費用として繰越した額を使用する予定である。
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