今日のイギリスではマルチアカデミートラスト(MAT)に代表される大小多くの学校群・連合が編成されている。個別の学校マネジメント権限は単位学校に委譲されており、しかも定期的に外部からの学校評価と結果の公表が義務付けられていることを受け、MAT傘下に入ることによって優れた学校管理職の実践を取り入れるなどの連携上の工夫が頻繁に取り組まれるようになった。 今年度はバーミンガム市における連携状況の調査を実施した。日英両国に共通する大きな社会問題のひとつである経済格差がこの地域では特に深刻化し、4割程度の児童生徒が満足な教育を受けていないリアルが確認された。ハイレベルな貧困の改善の兆しが見られず、学校マネジメント・連携の経験が豊かな校長(successful leaders)の存在が継続的な改善(CPD)にとって非常に大きいことが明らかになった。学校間連携を推進する際には地域の教育行政に影響されることが多く、地方当局(LA)との意思疎通が不可欠であるという点、調査したバーミンガムパートナーシップ(BEP)が緩衝材かつ連結機関となって連携を促進していることが特質であることも明らかになった。 一方、日本の学校間連携は小中連携を軸に、従来の児童生徒情報、家庭情報の共有や生徒指導上の指針の設定にとどまっているのが現状である。地域によっては学校運営協議会委員が小中で同一の地域住民が務めることもみられ、全体的な学校改善に取り組まれていることが特徴的であった。イギリスのような組織連合体を設立するための諸条件や要因が相違しているため、部分的な借用の検討余地が多くあると思料される。
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