研究課題/領域番号 |
19K02438
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
伊藤 実歩子 立教大学, 文学部, 教授 (30411846)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アビトゥア / マトゥーラ / オーストリア / ドイツ / PISA / コンピテンシー / 大学入試改革 |
研究実績の概要 |
2019年度は、8月にオーストリアでの現地調査を行い、ウィーン大学教育学研究科のホップマン教授、カチニック講師、オーストリア教育省、統一マトゥーラ経験者である学生、元ギムナジウムの生物学教員などにインタビューを行った。これにより、統一マトゥーラの全体像を、その問題点も含め把握することができた。加えて、オーストリアの統一マトゥーラ改革で申請者が着目したのは、口述試験である。近年、日本でもフランスのバカロレアなどの長い記述式問題が注目されてはいるが、一方、口述試験に着目した研究はほとんどないといってよい。中世から続くもっと古いこの試験方法は、ドイツ語圏において、記述試験と同等の価値を持つとされている。これは、文章を書き自分の考えを展開する能力と同様、教科に関する内容とそれに関連する自分の考えを口頭で説明できる能力(学力)が学校教育において、また社会において重視されているということを意味している。 コンピテンシーに基づいた統一マトゥーラ改革においても、客観的な評価が困難な口述試験が保持されている。その教授学的意義や実態を教員へのインタビューなどによって明らかにした。 また本年度は、日本における大学入試の「一発勝負」の傾向、あるいは過剰ともいえる入試の手続き的「公平性信仰」といった問題に対して、これまでの教育社会学の先行研究をレビューした。そのうえでドイツ語圏あるいはヨーロッパにおける後期中等教育修了資格試験の特徴と意義、また問題点を比較検討した。 なお、上記の研究の成果は、伊藤実歩子編著「(仮)変動する入試改革」大修館書店(印刷中)として広く社会に公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は8月にオーストリアで、ウィーン大学教育学研究科のプロジェクトチーム、統一マトゥーラ経験者の大学生へのインタビュー、教育省のマトゥーラ部局の担当者、AHS(ギムナジウム)の元教員へのインタビューなど、精力的に行った。 また、これらの成果は、現在印刷中の「(仮)変動する大学入試――ヨーロッパの中等教育修了資格制度改革――」(大修館書店)として発表する予定である。ここでは、ドイツのアビトゥア改革ならびにオーストリアのマトゥーラ改革を取り扱っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の計画としては、以下の点を予定している。①アビトゥア・マトゥーラの歴史的研究②現地調査によるアビトゥア(ドイツ)およびマトゥーラ改革(オーストリア)の実態の検討。 ただし、②は今後のコロナウィルス感染拡大防止の対策により、計画が遂行できないことも大いに予想される。その際には、研究に協力してくれる現地の研究者などにオンラインでインタビューすることも考えられる。また、それに関係して、休校が続いた現地において、統一マトゥーラやアビトゥアがどのような変更を余儀なくされたのかを調査する必要があると考えられる。それによって、ポストコロナ時代の大学入試のあり方を、ドイツ語圏ならびにヨーロッパを事例として検討できるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は学内で役職についていたため、長期の海外調査などができずに次年度使用額が生じたが、2020年度は、これを使用することで複数回の海外調査(ドイツ・オーストリアを含む)を計画している。
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