研究課題/領域番号 |
19K02438
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
伊藤 実歩子 立教大学, 文学部, 教授 (30411846)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高大接続改革 / マトゥーラ / アビトゥーア / オーストリア / ドイツ |
研究実績の概要 |
本研究の2020年度の研究成果は以下のとおりである。『変動する大学入試ーー資格か選抜か ヨーロッパと日本』大修館書店を編著者として出版した。本書は、ヨーロッパの後期中等教育修了資格試験の最近の改革を、その背景となる理論や歴史にも言及することで、混乱を極めた日本の大学入試改革を相対化することを目的とした。ここでは、本研究に直接的に関係するドイツとオーストリアのアビトゥアとマトゥーラの改革を検討しただけではなく、代表編者として、日本のこれまでの大学入試改革に関する理論 整理及びその批判的検討、及びヨーロッパ諸国の改革を概観する序章を執筆した。 本書は出版直後から多くの反響を得た。とりわけ、朝日新聞の書評(2020年11月14日)で取り上げられて以降は、教育学の各分野、とりわけ、申請者の研究分野(教育方法学)以外の教育社会学や高等教育といった他分野から注目されてきている。そのため、本書に関連する研究会での発表や論文の執筆の依頼が相次いだ。『変動する大学入試』で十分に取り上げられなかった論点に関しても、発表あるいは論文執筆の機会をえて、研究テーマをより一層検討することができた。以下に検討した(これから検討する)論点は、いずれも、日本の大学入試において十分に議論されていない、これからの入試改革の内容・方法に関する研究になると考えている。 具体的には、オーストリアのマトゥーラ改革と探究的な学習について、マトゥーラ改革と政治教育について、マトゥーラ改革における文学の位置づけについて、などである。これらのうちいくつかは2021年度にも引き続き検討したうえで、学会や書籍などでの成果を発表する機会を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに、ドイツおよびオーストリアの中等教育修了資格試験に関しては、『変動する大学入試』などで成果をあげただけでなく、同書でドイツ語圏の動向を他のヨーロッパ諸国ならびに日本の改革と比較することで、相対化することができた。ヨーロッパの大学入試を概観したうえで、ドイツ語圏の改革の特徴(意義や問題点)を明確にすることができた。また、ドイツ語圏の大学入試に関する論点も、当初計画には含めることができなかったもの(大学入試と文学、大学入試と政治教育、大学入試と探究的な学習など)まで検討することができた、あるいは2021年度に検討する見込みがすでにある。 ただし、2020年度は海外調査が不可能な状況であったために、現地の生の情報(インタビューや学校調査)を得ることができず、その点は、2021年度に計画をしている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年9月より1年間、勤務校の制度を利用して研究休暇に入る。勤務校の海外研究制度を利用して、ウィーン大学教育学研究科の客員研究員として研究に従事する予定である。オーストリアの大学入試に関する聞き取り調査や学校調査を計画している。また、オーストリアだけでなく、ドイツの研究者とも継続的な共同研究を行っているため、ドイツのアビトゥア改革の現状も調査したいと考えている。その成果は、ドイツやオーストリアの研究者たちと、シンポジウムなどによって発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染拡大により、国内外の学会が中止または延期、あるいはオンライン開催となり、加えて、予定していたドイツ・オーストリアの短期海外調査が不可能になったことで、旅費の支出がなかったため。 今年度は、9月から1年間、勤務校の海外研究休暇を取得している。すでにウィーン大学教育学研究科での受け入れを許可されている。その渡航費や、期間内のドイツでの調査のための旅費の支出が多くなると考えている。
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