研究課題/領域番号 |
19K02450
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
渋江 かさね 静岡大学, 教育学部, 准教授 (10377707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会教育事業 / 対象としての成人 / 成人教育学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「社会的包摂」に寄与する社会教育の発展に向けた成人教育学の構築をめざし、マルカム・ノールズが発展させたアンドラゴジーについて、どこに可能性があり、どこに限界があるかを、国内外の先行研究および国内の事例の整理と分析を通して明らかにすることである。初年度は、国内における成人を対象とした社会教育実践の原理面に関する関連文献を収集して整理することを、おもに試みた。具体的には、成人を対象とした戦後日本の社会教育実践のうち、とりわけ社会教育職員が事業の考察を試みた先行研究を収集し分析した。分析の結果、2つのことが明らかになった。ひとつは成人学校に関する研究から見えてきたことである。運営に受講者がかかわることと、自主グループの形成に関することに言及するものがあった。いずれにおいても、学習の主体の問題が重視され、問われていた。学習内容の編成に関して、成人の「学習要求・能力・年齢・生活構造などの異質多様性」を考慮して、「画一形式的ではなく、個性的な学習計画にすること」が説かれていた。さらに、「教育者、指導者の、成人教授法、指導法に関する未熟練」に言及しつつ、教育者も被教育者も「成人たることにおいて同格」であると、「教える―教えられる」ではない関係性を指摘するものを確認できた。もうひとつは、「住民、農民、婦人(女性)、労働者」という形でおこなわれてきた社会教育事業に関し、婦人を対象とする社会教育事業に携わってきた職員が、「生活主体者、主権者しての成人の学習」のあり方に言及していることが確認できた。以上の成果については、2019年度日本社会教育学会第66回研究大会で口頭発表すると共に、論文としてまとめて静岡大学教育実践総合センター紀要No.30に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2019年度は、おもに2つのことを計画していた。ひとつは、国内における成人を対象とした社会教育実践の原理面に関する研究に関する関連文献を収集して整理し原理を抽出することである。こちらに関しては、上記の通り一定の進捗があった。もうひとつの計画は、ノールズによるアンドラゴジーの可能性と限界について論じた国内外の先行研究の収集と分析である。こちらに関しては、おもに先行研究の収集を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ノールズによるアンドラゴジーの可能性と限界について論じた国内外の先行研究の収集と分析」については、次年度も継続して資料収集と分析を進める計画である。国外の研究に関し、ERIC(Education Resources Information Center)等の検索サイトや、北米の成人教育に関する雑誌等に当たり収集を進めていく。 つぎに、次年度は「社会的包摂」に寄与する成人を対象とした社会教育実践事例に関して、公開された刊行物に見られるものを収集し整理する計画となっている。この計画を進めるに際し、社会教育における「社会的包摂」のとらえ方を明確化することが、あわせて求められると考えるため、それをおこなっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず人件費・謝金に関し、収集した資料の整理を依頼する必要が生じたときのために計上していたものの、その必要がなくなったためである。つぎに、その他に関して当初計画よりも投稿論文の英文要約校閲料がかからなかったためである。次年度はコロナウイルス感染症が収束すれば、遠方での学会大会が予定されているため、そちらに参加するための旅費にあてる。
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