研究課題/領域番号 |
19K02450
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
渋江 かさね 静岡大学, 教育学部, 准教授 (10377707)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 成人教育者 / 成人学習者を理解するためのモデル / 他分野の実践への適用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「社会的包摂」に寄与する社会教育の発展に向けた成人教育学の構築をめざし、アンドラゴジーとりわけマルカム・ノールズが発展させたものについて、どこに可能性があり、どこに限界があるかを、国内外の先行研究および国内の事例の整理と分析を通して明らかにすることである。 本年度は、マルカム・ノールズのアンドラゴジーの可能性と限界について論じた、国外の先行研究を収集し整理することを進めた。収集した先行研究を概観した結果、2010年以降の北アメリカの成人教育研究に関する書籍と成人教育実践者に向けた成人教育に関する書籍の中でのアンドラゴジーの扱いに絞り、さらに分析を進めることにした。前者に該当する書籍としてMerriam & Baumgartner(2020)Learning in Adulthood (4th ed.)を検討した結果、北アメリカ成人教育研究・実践において歴史的な意義づけがされていること、理論として批判的論争があることがわかった。一方で、様々な分野で成人学習をデザインする上で適用されていることがわかった。後者に該当する書籍として、Brockett (2014)Teaching AdultsとSt. Clair (2015)Creating Courses for Adultsを検討した。その結果、成人教育者教育者が何をなぜするかを説明する有効な概念のひとつであること、成人教育者に枠組みを与えるものの理論というよりも成人学習者に関する一連の前提としてとらえられていることがわかった。 以上より、マルカム・ノールズのアンドラゴジーは、成人教育者にとって重要な概念ではあるものの、成人教育実践・理論の中で相対化してとらえられていること、理論というよりも概念や前提として位置づけられていることが確認できた。以上の研究成果については、日本学習社会学会第17回大会(オンライン)で口頭発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、おもに2つのことを計画していた。ひとつは、ノールズによるアンドラゴジーに関して、可能性と限界についてどのように論じられているかをより詳細に解明していくために、国内外の先行研究の収集を継続しつつ、収集したものを購読して考察する。もうひとつは、「社会的包摂」に寄与する成人を対象とした社会教育実践事例に関して、公開された刊行物に見られるものを収集し整理することである。前者に関しては一定の進捗があったものの、後者に関しては事例収集が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度になるため、「社会的包摂」に寄与する成人を対象とした社会教育実践事例に関し、公開された刊行物に見られるものの収集に努め、分析に取り組めるようにする。具体的には『月刊社会教育』、『社会教育』、『月刊公民館』等の雑誌を中心にあたって収集を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初計画で出席を予定していた学会が、すべてオンライン開催となったため、予定していた旅費を使用することがなくなった。人件費に関しても、同様の理由により、使用が難しい状況にあった。次年度以降は、新型コロナウイルス感染症に配慮しながら、対面で実施される学会に参加して研究成果を発表していく際に使用していく予定である。「社会的包摂」に寄与する成人を対象とした社会教育実践事例の収集の際、他図書館からの論文取り寄せや関連文献の購入に使用していく予定である。
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