最終年度の研究として、社会教育職員(以下、職員)によって執筆された論考から社会的包摂につながる実践にかかわってきたと判断でき、職員として勤務を続けている者6名に、インタビュー調査を実施した。インタビューに協力してくれた職員のほとんどが、社会的包摂を明確に意識してかかわってきてはいなかった。しかし、自己のくらしを対象化していく学びに丁寧に寄り添い・支えてきたことが、結果として社会的包摂につながっていたとわかった。そのことを前提に、社会的包摂につながる社会教育実践での職員のアプローチについて、インタビュー内容に即して明らかにすることができた。また、参加者が成人であることを意識して実践をしているかについては、意識していないとの回答が多くを占めたものの、時間がない中で学んでいる、学習動機が多様であるといった点が指摘された。 本研究の成果として、地域のできごとを学習の出発点としていたり、参加者が課題を見つけるプロセスを大事にしていたり、人とのかかわりの中で人が学び育つことを大切にかかわっていたりする職員のアプローチが、包摂的な地域をつくることにつながるということが明らかになった。これらの点は、ノールズのアンドラゴジーの「学習者の特性に関する少なくとも重要な4つの考え方」と重なってくるものもあると言える。しかし、本研究実施した職員へのインタビューからは、職員が参加者を成人として意識することは、少ないとわかった。ノールズのアンドラゴジーは、ペダゴジー的な教育方法に成人学習者が抵抗を示したという点から、追求が進められてきたものである。しかしインタビューに協力してくれた職員は、当初から実践の場面でペダゴジー的な方法ではないアプローチを取っていたことがわかった。
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