研究課題/領域番号 |
19K02455
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
若林 身歌 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50400536)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境教育 / 教育学 / ドイツ |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツにおける代表的な環境教育学の視座を明らかにするとともに、その背景にある環境教育の史的展開や環境教育の質的転換に関わる各時代における特徴的な議論を解明することを課題としている。3年次となる2021年度の研究活動およびその成果は次の通りである。 一つ目の取り組みは、環境教育の視座の解明である。2年次に引き続き、ドイツにおいて1980年代に官製の環境教育に対する批判的立場として台頭した「エコ教育学(Oekopaedagogik)」の主張と思想を解明することを課題として取り組んだ。昨年度は主要著作を手がかりに「エコ教育学」の代表的論者の主張を捉えたが、今年度は「エコ教育学」運動の母体となった雑誌の分析を行った。この作業を通して、「エコ教育学」の名のもとで様々な担い手が展開したエコロジーと教育に関する主張を解読し、「エコ教育学」の主張の多様性とその基軸となる環境教育学的な思想・理念を明らかにするとともに、「エコ教育学」固有の特性であるエコロジー運動としての側面とその実体に迫った。 二つ目の取り組みは、環境教育の史的展開と環境教育の質的転換に関する議論に関する研究である。今年度は「エコ教育学」の分析作業と合わせて「エコ教育学」による環境教育批判を軸に1980年代における官製の環境教育批判論の検討を行い、1980年代のいわゆる展開期における環境教育の質的転換、すなわち環境教育(Umwelterziehung)から環境教育(Umweltbildung)への転換と、その背景における環境教育への批判的・教育学的検討の動きを読み解くことに努めた。 また、これらの研究活動と並行して携わった『カリキュラム研究事典』の翻訳作業では、米国における環境教育学の代表的な視座に関する知見にふれ、ドイツにおける環境教育学の視座や環境教育の史的展開の特質を浮き彫りにするうえでの貴重な資料を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画では、ドイツにおける環境教育学の視座に関する研究および環境教育の史的展開に関する研究に関わる課題として、文献研究に加えて現地での関係者や専門家へのヒアリング調査を予定していた。しかしながら、2019年度末より新型コロナウイルス感染拡大の影響により渡独が困難な状況が続いており、初年次(2019年度)および2年次(2020年度)の年度末に実施を予定していた現地でのヒアリング調査を実施することができなかった。また、3年次(2021年度)においても国内および訪問先のドイツにおける感染拡大状況が収まらず、引き続き現地調査を延期している状態である。したがって、この点において当初の研究計画より遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
この間の研究期間においては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により現地調査の延期が続き、研究活動に遅れが出ている。そこでこうした状況に対応するために、現地での資料収集に代わる方法で必要な文献や史料を収集するほか、現地の専門家や関係者への聞き取り調査については文書による対応が可能な場合には文書での調査を依頼するなど、現地での資料収集や聞き取り調査を補うための取り組みを進めている。 しかしながら、文書やオンラインでの聞き取り調査においては対応可能な対象者が限られているうえ、聞き取りが可能な範囲が限定されることが課題になっている。よって、次年度以降の研究活動に向けては、引き続き現地調査が困難な場合を想定した取り組みを進めつつも、国内および調査地であるドイツの感染状況を注視しながら、できるだけ現地調査が実施できるように計画・調整をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、初年度(2019年度)と2年次(2020年度)に予定をしていたドイツでの資料収集とヒアリング調査が実施できず、次年度以降に延期となった。次年度使用額が生じたのはそのためであり、繰り越しをした研究費は、次年度以降、延期していた現地調査を実施する際の渡航費および現地調査費用として使用する。
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