研究課題/領域番号 |
19K02497
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
湯本 浩之 宇都宮大学, 留学生・国際交流センター, 教授 (20534712)
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研究分担者 |
荻野 亮吾 佐賀大学, 学校教育学研究科, 准教授 (50609948)
岩本 泰 東海大学, 教養学部, 教授 (70548007)
二ノ宮リム さち 東海大学, 現代教養センター, 准教授 (90646499)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SDGs / ESD / アクティブ・シチズンシップ / 対話 / 熟議 / ファシリテーション / パートナーシップ / プラットフォーム |
研究実績の概要 |
4年目となる本研究では、グローバルな動向の整理と国内地域の分析に注力した。 まず、グローバルな動向の整理として、研究1「国際的な指標と先行研究の検討」に関して、2022年6月に開催された第7回ユネスコ国際成人教育会議に関わって、ESDに関する国際的議論や世界各地の実践報告の整理を行い、日本社会教育学会の研究大会や、本会議のフォローアップ会合にて、これらの調査成果を発表した。具体的には、基礎教育、職業教育、アクティブ・シティズンシップ教育の三領域を分断せず、複合的に地域で取り組む実践の重要性を明らかにした。同時に、日本ではこの三領域が分断されている課題も明らかになった。 次に研究2「先進事例の調査」については、前年度までに調査を行った札幌・板橋・岡山の三つの先進的地域についてケースレポートを作成した。このレポートに基づき、研究3「調査結果の分析とモデル提示(持続可能な地域形成のための教育要素の抽出)」を進め、その成果を日本社会教育学会の年報(2023年9月刊行予定)等に、2023年度以降に公表していく予定である。事例から導き出された主な要素は、①SDGsの理念に基づく政策や行政組織の変容、②地域の団体や市民組織の連携・協働を強化するための基盤(プラットフォーム)構築の方法、③官民の対話や熟議を成立させるためのファシリテーションの方法、④長期的な取り組みを支えるエンパワメント戦略等である。 最終年度は、これらの教育要素を踏まえ、各地域のSDGsに関わる実践を評価する方法を具体化する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1の「国際的な指標と先行研究の検討」については、代表者と、研究協力者の近藤を中心に、成人教育会議の開催に合わせて、成人教育やSDGsに関わる国際的議論の整理を進め、社会教育・生涯学習とSDGsの関係性や、アクティブ・シティズンシップの概念について検討を行うことができた。成人教育をめぐる基礎教育、職業教育、アクティブ・シティズンシップ教育の包含的な把握の方法は、地域レベルでのESDやSDGsの評価方法の確立においても重要な視点であり、研究1に関しては確実な進捗を見せている。 研究2「先進事例の調査」については、新型コロナウイルス感染症の影響で新たな現地調査は難しかったが、前年度までに行った調査結果をもとにして、分担者の荻野・二ノ宮リム・岩本、研究協力者の近藤を中心に、ケースレポートの作成を行うことができた。これらのケースレポートをもとに、研究3の「調査結果の分析とモデル提示(持続可能な地域形成のための教育要素の抽出)」についても、重要な論点の抽出を進めている。現在、研究協力者の田中が中心になってまとめている日本社会教育学会の年報にも研究成果を公表する予定である。次年度は、この論点に沿って、研究4「新規指標の提案(ESDを評価するための指標の提案)」に尽力する。 以上のように、研究3までは概ね順調に研究は進められているものの、当初の計画より進捗が遅れている。そのため、研究期間をさらに1年間延長することとした。以上の状況を総合的に勘案して、本研究は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、研究3「調査結果の分析とモデル提示」で提示した論点に沿って、研究4「新規指標の提案(ESDを評価するための指標の提案)」を行う予定である。この指標では、事前に想定した評価軸に沿ってアウトプットの評価を行うものだけでなく、対話や熟議の程度や、プラットフォームの構築課程の段階の診断等も含む予定である。行政だけでなく、市民組織や地域の組織が自分たちの実践や地域の状態を主体的に診断できる評価方法となる予定である。 開発した指標については、時間の許す限り、事例調査を行った地域にフィードバックを行い、政策立案者・市民活動関係者・研究者の三者で議論をしながら改善を試みる。2023年度は最終年度にあたるため、ケースレポートの内容に、指標や評価方法の提案も合わせた報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、国際会議の参加や、現地での調査研究を行うことができたが、前年度までの感染症の影響もあり、調査フィールドに赴く回数や、研究メンバーで集まる機会は当初の想定より少なくなっている。このため、当初多くの金額を計上していた国内旅費を使用する機会が少なく、これにより次年度使用が生じた。 2023年度の使用計画については、フィールド調査のための旅費や、打ち合わせのための経費を想定する。さらに、年度末に、成果報告書の刊行を行う予定であり、この刊行経費も想定する。
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