研究課題/領域番号 |
19K02509
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
光永 亜希子 (西田亜希子) 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特別研究員 (70554319)
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研究分担者 |
光永 悠彦 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (70742295)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新設大学 / 大学昇格 / 専門学校 / 短期大学 / 学校法人 / 定員充足 / 大学設置基準大綱化 / 工業(場)等制限法 |
研究実績の概要 |
本研究はまず地域特性に注目するが、単純に都市部・地方と二分するのではなく、主な産業やその景気といった地域特性を反映し、考慮する必要があることが分かった。つぎに分野であるが、近年定員充足を期待して医療系学部を改組・改変により設置するところがあるが、専門学校からまず短大に昇格するには、その障壁が厚いことが質的調査よりうかがわれた。 大学昇格の主なパターンは、(1)専門学校→大学、(2)短大→大学、(3)専門学校→短大→大学と考えられる。しかし、大学昇格を果たした新設大学を整理してみると、短期大学や短期大学部を併設したままのところもある。短大が戦後一時的な措置としてできたことや、高学歴化の趨勢が大学昇格を後押しするのならば、大学に昇格し、短大が無くなる(2)短→大のパターンに収まるはずだが、実際は短期大学部という形で併設し残す(2)‘短→大・短併設のパターンを取る割合が多いのである。経営資源が分散することとなるため、短大の併存がなされないことも多い中、短期大学の機能を保持する理由を探ることが求められていると言える。 新型コロナウィルス対策のため、図書館等の保有する一次資料へのアクセスが難しくなったこともあり、本年度は民間の保有するデータを用いた分析を行った。具体的には、新設大学のうち短期大学・短期大学部を併設したままのところがあることに着目し、短大・短期大学部の定員充足率のデータ収集と、学校法人の財務諸表の取りまとめを行った。今後は定員充足に地方特性、分野、ジェンダーなどの視点から分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目2020年は、地域特性のパイロット分析として、大学進学率と都道府県ごとの求人倍率や産業を指標として関連を検討した。高卒後の進学率は、都市部と地方といった人口の多寡と高等教育機関の収容力だけで決まるわけではなく、立地地域の産業構造や好況・不況が高卒後の進学率や地元定着/流出を左右していた。たとえば他の地域が不況に傾く中、東海圏のような比較的工業分野の活況を維持していた地域は高卒後進学率がよいことが確認された。 2年目2021年・3年目2022年は学会でのアドバイスを元に、「学校法人」単位で検討するため文部科学省が毎年刊行する『文部科学大臣所轄学校法人一覧』より5年刻みのデータベースを作成し、推移を検討する予定であったが、新型コロナウィルス感染症に係る制限指針により学外者への閲覧が制限されていたため叶わなかった。そのため2年目は補助的な質的調査を行った。医療系で専門学校から短大への昇格を目指したが取りやめた学校におけるヒアリングから、分野特性が大きく左右されることがうかがわれた。3年目は新設大学の大学案内パンフレットを取り寄せ、その資料整理を行った。一時的な措置とされる短大は、大学に昇格すれば消化されてしかるべきだが、併設しているところはまだ多い。その併設に注目し、短期大学の定員充足状況のデータを収集した。 近年の大学の改組・改変では古くからある女子大・女子短大が定員充足を期待して医療系を設置するケースが多くみられる。新設大学においても医療系を母体にする大学や、改組で医療系を併設する大学はある。そうしたことを考慮に入れ、学校法人が短大と四大の両方を保有する場合に、医療系の学部・学科をもつ大学とそうではない大学で定員充足率がどのように異なるかに着目した分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後も新型コロナウイルス感染症に係る活動制限指針により参考とする資料のアクセスに制限がかかることが考えられる。そのため研究当初に予定していた5年ごとなどの複数時点のデータをとり、大規模量的調査から経緯を明らかにすることは難しいと予想される。 そこで、学校法人や大学、短大のそれぞれについて、入手できる範囲での単年度の指標を用いて、一定の傾向を検討した上で、他の年度についても同様の傾向がみられるかを検討するアプローチをとることとした。今後の研究方針としては、年度を変えた場合に同様の傾向がみられるかについて、検討を行うこととする。これまで大学や短大の定員充足率は、大学のwebサイトから情報を収集していたが、一定期間経過後に削除されることが多いため、過去分のデータの収集方法について検討する。また財務諸表等のデータについては、過去分をまとめたデータを購入できることがわかっている。 並行して、定員充足率以外の量的な指標を検討する。定員充足率は、大学昇格への関連要因の一つに過ぎず、資格試験への合格率といった他の関連要因を考慮した分析の枠組みを検討することが必要となる。定員充足率や他の関連要因が、学校法人のどのような特性を表す指標かについて、これまでの知見と合わせて検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料の閲覧制限のため、学校法人単位でみたデータベースの大本となる文部科学省『文部科学大臣所轄学校法人一覧』の複写やその入力のための人件費およびそのための交通費を変更し繰越すこととなった。ただし一部は短大併設の新設大学に焦点をあてるため、対象となる短大をリストアップしそのデータ入力費に充てた。
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