研究課題/領域番号 |
19K02518
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
山本 和行 天理大学, 人間学部, 准教授 (00584799)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 植民地教員 / 学校 / 地域 / キャリア / 台湾 / 初等教育 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本による植民地統治下の台湾における教員の歴史的・社会的位置づけについて明らかにするために、植民地期に台湾に設置された初等教育機関(国語伝習所、公学校、小学校)に配属された教員の経歴について調査し、出生地(日本/台湾/その他)、民族(日本人/台湾漢族/先住民)、出身学校(師範学校/その他)、経歴による異同を整理するとともに、そうした人々がどのような学校に配属され、どのようなキャリアコースを歩んでいたのかを検討した。 本年度の研究活動及び検討を通じて、これまで、教育制度、学校制度、教員養成制度といった制度的観点からのみ、植民地統治下台湾の教員という存在を捉えようとしてきた状況に対して、まず、教員のキャリア形成といった個別具体的な視点から学校教員の歴史的な位置づけと、実際に学校教育がどのような人々によって機能していたのかを内在的に明らかにするための端緒を得ることができた。 とりわけ、日本が台湾統治を開始した1895年から1896年にかけて台湾へと渡った日本人教員においては、1、当時の小学校教員のなかでも比較的安定した立場や経歴を持った人々が台湾に渡っていたこと、2、半分近くの教員が病気などの理由で5年以内に公職を離れるが、勤続年数が長くなると待遇や地域における立場が飛躍的に向上すること、3、特定の地域および学校で長期にわたって勤続した教員は、その地域の指導的な立場に着くことが多い事、が明らかになった。 以上のような傾向が明らかになったことにより、統治者側が一方的に整備を進めた近代学校が、被統治者である台湾の人々が生活する地域に普及・浸透していくための要素のひとつとして、学校教員の日本「内地」における経歴や、特定の地域に入り込みながら地域の人々との往還関係のなかで教育をおこなうといった教員の個別性が影響していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初に想定していた諸機関への資料調査、および研究成果の公表について、おおむね実行できている。 ただし、令和2年1月以降、新型コロナウイルスの日本および台湾を含めた世界的な感染拡大にともなう研究会の中止や公的機関の閉鎖、海外渡航の自粛要請などの影響により、予定していた調査および研究成果の公表ができなかったことがあり、区分としては「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度に明らかにした教員の歴史的立場を基に、地域社会の中で教員がどのような人々とつながり、どのような役割を果たしていたのかという、教員の社会的立場の形成過程を明らかにする。 そのために、教員の職能団体であった「教育会」の発行媒体や各学校の沿革史、学校所蔵資料を調査・分析する予定である。 ただし、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう各種の活動の自粛や公的機関の閉鎖、海外渡航の自粛要請などが、今後も日本と台湾において継続する場合には、インターネットを通じて公開されている資料の調査およびメールなどの電子的方法を使った聞き取り調査を代替的におこなうことで、研究の推進を図ることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの日本および台湾を含めた世界的な感染拡大にともない、研究活動の自粛、研究会などの中止、公的機関の閉鎖、および海外渡航の自粛要請などがおこなわれたことで、一部の研究活動をおこなうことができなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、調査先の追加・変更、および前年度に実施できなかった研究成果公表をおこなうことにより、予算を使用する。
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