グローバル化社会においては、英語力だけでなく、膨大な情報を処理し学習者が主体的に思考を深めていくための総合的な国語力が求められる。本研究では、これまでに海外や地域の学校において実践研究を進め、総合的な国語力の育成に「手書き」が有効であることを再認識した。そして、授業者の「板書」と児童生徒の記したワークシートによって個々のとらえを可視化し尊重しながらICTによって全体で共有し確認し合う効果的な授業展開について検証した。これからの社会に生きる子ども達の国語力育成のためには、書字行為、書字活動の有意性を活かして「手書き」による個々のとらえを大事にしつつICTを活用して全体で共有し確認し合うことが重要であることを確信した。 本年度には、快適な書字を保障するための書字体勢を確立して、右手書字用と左手書字用の支援ツールモデルを完成させた。また、書字が苦手な子ども達への文字指導に生かせるよう、見方と書き進め方の両面を理解させて習得させる効果的な小学校全学年用の漢字学習ワークの市販書も作成した。昨今は授業において「手書き」の場面が少なくなったが、学習者自身が書き留めなければ思考の可視化は困難で、指導者側も個々の学びの足跡を把握できない。そこで、「手書き」が有効な場面とICTを活用できる場面とを精査して国語の授業展開を考えられるよう、教員研修用動画に反映させた。学校における言語環境の整備についても講義の際に奨励した。 さらにAIを導入して書の印象を分析したことを契機に、国内外、老若男女問わず、人間がどのように文字を活用して今に至ったのかを検証し、人としての書字活動の意味を問い直すことができた。子ども達に対して書表現へとつながる創造的で言葉を大事にした書字活動の場を提供し、シニアの方とも言葉を軸にした交流活動を継続的に展開した。このように、最大限に本研究の成果を地域や教育現場に還元できた。
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