研究課題/領域番号 |
19K02762
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
谷村 千絵 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40380133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジレンマほぐし / 防災道徳 / 批判的実在論 / 防災教育 / モラル・ジレンマ / クロスロード / 子ども哲学 / 当事者性 |
研究実績の概要 |
本年度において、新しい防災道徳の実践を「ジレンマほぐし」と名づけ、細部における実践上の工夫等を通し、また、理論的な意義づけもおこない、実践的確立がほぼ完成したと考えられる。なお、新型コロナウィルスの人権問題にも取り組んだことで、実践の場を増やしたこと、理論的基盤としての批判的実在論についても研究が進んだことで、研究が飛躍的に前進した。主な研究実績は以下の4点が挙げられる。 まず、1つ目として、日本教育学会の第79回大会において「防災道徳―授業の再構成と新しい実践―」と題して自由研究発表(個人)を行なった。「防災道徳」の先行事例について行なった理論研究を踏まえ、新しい防災道徳の実践の特徴を当事者性に見いだし、それによって、昨年度までに実施した「ジレンマほぐし」の授業の意義を提示した。2つ目として、本研究の理論的基盤となる批判的実在論と教育について唯物論研究年誌に論考を発表した。批判的実在論について、リトロダクションという推論形式が本哲学の発展形態を貫いていることを明らかにし、また、実践を議論の射程に入れている点をこの哲学のもう一つの大きな特徴として提示した。さらに、3つ目は、新型コロナウィルスの人権問題を扱う授業としても「ジレンマほぐし」の実践の場を広げたことである。教材を新たに開発して学校現場や教員養成の授業で試みることができ、「ジレンマほぐし」の授業が他の教育的な取り組みと合わさることでよい教育的効果が生まれることも確認できた。 4つ目として、これらの研究成果をあわせて論考をまとめた。新しい教育学の構想について特集が組まれた学会誌に、投稿した(現在査読中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで、防災道徳の新しい形として避難所の人権問題を扱っていたが、今年度は、コロナの人権問題を考えるにあたって、実践の場を広げる契機を得ることができた。 また、批判的実在論の研究も進み、実践事例とあわせて論文が投稿できたことは、大きな進展であった。とりわけ、本実践の意義について「防災教育から考える新しい教育学」のというコンテクストに載せて論考が進んだ。この点については、防災道徳の研究として、この実践の意義をより広い文脈でとらえるものであり、当初の計画以上の進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
防災道徳の実践的確立ならびに基礎的理論についてかなりの程度まで明確になり、また、上記のように当初の計画以上の進展も見られた。投稿中の論文が発表できるよう修正要求があればそれに応えるなど、尽力したい。また、残された課題は評価である。この点について、今後の研究期間において、さらなる研究を展開したい。
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