研究課題/領域番号 |
19K02762
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
谷村 千絵 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40380133)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ジレンマほぐし / 批判的実在論 / フェーズフリー / 防災教育 / 道徳教育 / 人権教育 / 避難所 / 当事者意識 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績としては大きく3点が挙げられる。 ①防災道徳として開発した「ジレンマほぐし」について、日本教育学会の新しい教育学の可能性を問う特集号の論文として投稿し、受理された。「ジレンマほぐし」は防災道徳としての意義とともに、知の学びを社会的行動につなげる実践であること、学際性を理解する基礎的な姿勢を養うものであることを、批判的実在論によって明らかにした。<論文>谷村千絵・近森憲助、「「ジレンマほぐし」の授業実践と批判的実在論―防災教育から考える新しい教育学―」、『教育学研究』第88巻第2号、日本教育学会
②防災教育シンポジウム分科会で「ジレンマほぐし」のワークショップを行った。防災道徳をフェーズフリー実践として考えられるという新たな認識を得た。令和2年度に鳴門市教育委員会と連携してフェーズフリーについて研究してきたことと繋げることで、理論的に実践的に発展した。<シンポジウム発表>鳴門教育大学創立40周年記念シンポジウム「明日のための防災を考える」のフェースフリーの分科会においいて、「ジレンマほぐし」体験ワークショップ(令和3年11月3日)、<関連論文等>谷村千絵「学校におけるフェーズフリーの導入の可能性と課題―鳴門市教育委員会の取り組みを中心に―」、『鳴門教育大学学校教育研究紀要』第36号、『いつもともしもがつながる学校のフェーズフリー』鳴門市教育委員会 令和3年3月発行の作成協力
③防災関連の政府委託事業プロジェクト検討会において話題提供を行った。当事者意識の育成の意義を明確に位置づけることができた。<研究成果発表>谷村千絵「災害時の複雑な状況における当事者意識の育成―協働的な思考のレッスンとしての「ジレンマほぐし」―」文部科学省科学技術試験研究委託事業 防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト 令和3年度情報発信検討会「複合災害対応」(令和4年2月7日)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
防災道徳の授業として開発してきた「ジレンマほぐし」の授業実践を、学習者の実践的な社会性の発達や学際性を理解する姿勢に結び付けてとらえる理論的基盤を批判的実在論により明確にすることができた。また、フェーズフリーという新しい防災の形としても、本実践をとらえうることを認識できた。 道徳も防災も、当事者意識をもつこと、実際の行動につなげることが大変重要であるという認識において本研究を進めてきたが、それらが具体的には学習者の社会性の発達や社会的行動につながることで成果を確かめられること、フェーズフリーという主体的かつ日常的な防災の取り組みとして評価できること、などいくつかの評価の視点を得られた。 また、これまで例題としてきたのは避難所やコロナ状況においての人権や正義にかかわるジレンマ状況であったが、複合災害発災時という複雑な状況における協働的思考のレッスンとしても意義があることが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である防災道徳の実践的確立と基礎的理論の研究については、「ジレンマほぐし」の授業実践が試行錯誤を経て、一つの実践モデルとして提示、指導できるようになり、この実践を支える批判的実在論という基礎的理論の意義も、学術論文において明確にすることができた。これらについては一定程度の達成されたものと考えられる。 残る課題は「ジレンマほぐし」の評価方法の研究である。これについては、いくつかの評価指標を得ているが、理論的検討も踏まえて、明確な評価方法を構築することが今後の研究課題である。
|