研究課題/領域番号 |
19K02791
|
研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
田尻 信壹 目白大学, 人間学部, 教授 (10436800)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 史料を活用した課題追究型授業 / 世界史授業アーカイブ / 歴史的思考スキル / 知識構成型ジグソー法 / 歴史授業の収集 / 博物館資料の活用 / 協調学習 / 高大連携の推進 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学研究者と高校教員が共同して行うことを企図し、日米両国の世界史を中心とした歴史授業の現状を分析することである。そして、2018年3月告示の改訂学習指導要領の高校地歴科世界史(新科目・世界史探究)が目指す「史料を活用した課題追究型授業」モデルを開発して地歴科・社会科教員に向けて発信し、授業実践力の向上に資することである。 初年度の2019年度研究では、世界史を中心とする優れた歴史授業の収集を中心とした調査を行った。国内では、高等学校(新潟県立新潟高校[2019年9月、12月]、東京都立府中高校[9月]、神戸大学附属中等教育学校[10月]、栃木県立佐野高校[12月])の歴史授業と中学校の社会科授業(新潟市立白新中学校[9月])を調査した。2020年2月には、米国調査を行った。米国調査では、カリフォルニア州ロサンゼルスで高校と小学校を訪問して授業の収集と記録化を行った(Venice High School 、El Marino Lanuage School)。また、これと連動して歴史学習教材の調査と収集も行った。 本研究の研究成果として、日本社会科教育学会第69回全国研究大会(新潟大学)の自由研究発表部門で「AP世界史における歴史的思考スキル-単元“An Industorializing Age (工業化の時代)”を事例として-」を発表した(9月)。 刊行物の研究成果としては、図書『高校社会「歴史総合」の授業を創る』(共著、明治図書、2019年11月)と学術論文「『世界史』における文明の構図」『社会科教育研究』137(単著、2019年9月)、「知識構成型ジグソー法による協調学習の研究」『目白大学総合科学研究』16(単著、2020年2月)、「安井俊夫の歴史授業論に関する研究」『目白大学総合科学研究』26(単著、2020年3月)を執筆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界史を中心とした歴史授業・社会科授業の参観と記録・収集の面で研究の進捗があった。研究成果の発表においても、おおむね順調な進展が見られた。 まず、調査研究の状況について説明する。国内調査においては、高校での歴史授業調査(延べ)5校・中学校1校の(延べ)6校で調査を行い、地歴科・社会科の授業を収集、記録化することができた。また、海外調査では、米国カリフォルニア州で高校(1校)、小学校(1校)での歴史・社会科授業を参観し記録化することができた。米国調査では、授業の参観と記録・収集と並んで、全米日系人博物館の訪問やグランドキャニオン調査を通じてSDGsの視点からの教材収集を行い、教材開発に向けての貴重な資料を収集できた。 研究成果は筆者が開設したホームページ(世界史授業アーカイブ、www.archives-whl.jp/index.html)上に逐次、掲載する一方、学会での発表(日本社会科教育学会)、学内FDにおける報告を行い、研究の発信・広報につとめることができた。また、研究論文として学会誌(1編)と学内紀要(2編)に発表するとともに、図書『高校社会「歴史総合」の授業を創る』(共著、明治図書、2019年11月)として刊行することができた。『教育科学 社会科教育』(明治図書刊行)に「歴史的思考力を伸ばす授業デザイン」という題目で1年間の連載を行った(2019年4月号~2020年3月号、12回)。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は本研究の中間年度(2年度目)にあたる。そのため、初年度(2019年度)の研究成果を土台として、以下の研究を推進する。 まず、調査研究では、2年度前半(2020年4月~9月)は新型コロナウィルス感染症拡大の影響が続くと予想されるので、国内・国外の調査が難しいと判断される。そのため、2019年度に収集した授業記録の整理と分析を行い、その研究成果を筆者が開設したホームページ(世界史授業アーカイブ)を通じて発信していく。高校教員との連携の面においては、直接対面しての活動が難しいため、Webex、Zoom等の遠隔会議アプリを通じての情報交換につとめる。同年度後半(2020年10月~2021年3月)に入り、学校での授業調査が可能になるならば、国内においては、世界史を中心とした中・高校の歴史・社会科授業の参観と記録化を再開する。米国での調査も2021年2月を目途に実施することを検討する。そして、先進的な歴史授業の収集と記録化を進める。 調査研究とともに「歴史的思考スキル」・「課題追究型歴史授業」に関する文献を中心とした理論研究を進める。そして、その成果をホームページに公開し情報の発信につとめ、世界史を中心とした地歴科・社会科授業のデータベース化を進める。 現在までの研究成果を教科教育(社会科教育、地歴科教育)系学会で発表・報告する。これまでに収集してきた歴史授業の記録や実践を整理し、学術図書として刊行するための準備を進める。そして、最終(2021)年度での刊行を目指したいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度(2019年度)の研究テーマの一つとして、日米の歴史教科書の史料活用に関する内容を分析し、思考スキルに関わる記述についての特徴を明らかにすることであった。初年度は授業の収集調査を中心として行ったこともあり、このことについては進捗が遅れている。そのため、2年度目(2020年度)については、初年度に実施した授業のテープ起こし(記録化)の費用と、歴史教科書分析に必要となる教科書や関係文献の購入にあてる。 初年度は、国内においては日本社会科教育学会の参加に留まった。また、米国調査では、カリフォルニア社会科評議会(CCSS)等の海外学会に参加できず、最新の研究動向を調査できなかった。2年度目は国内の社会科系・歴史系学会への参加と発表を積極的に行うとともに海外学会への参加を計画し、そのための費用にあてる。 2年度目は新型コロナウィルス感染症拡大の影響が続くと予想されるので、フィールドワークによる調査が難しいと判断される。高校教員との連携の面においては、直接対面しての活動ができない。そのため、テレビ会議ソフトなどのアプリ(WebeX、Zoom)を用いた調査や会議が必要となる。また、調査や会議を円滑に進めるためのPCカメラ、マイクなどの備品の調達も必要となる。そのための環境整備の費用にあてる。
|
備考 |
2015年度~2018年度科学研究費助成事業・基盤研究(C)「高大連携による『21世紀型能力』育成を目指す世界史単元開発とデータベース化」の助成を得て開設した。この度、2019年度~2021年度科研・基盤研究(C)「地歴科教員の史料を活用した課題追究型世界史授業の開発を支援するための研究」の助成を得ることができたので、引き続き「世界史授業アーカイブ」を運用することにした。
|