研究課題/領域番号 |
19K02791
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
田尻 信壹 目白大学, 人間学部, 教授 (10436800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 史料を活用した課題追究型授業 / 世界史授業アーカイブ / 歴史的思考スキル / 歴史授業の収集 / アメリカの歴史授業 / 高校の地歴科歴史授業 / 歴史学習のアルゴリズム / 高大連携の推進 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学研究者と高校教員が共同して行うことを企図し、日米両国の世界史を中心とした歴史授業の現状を分析することである。そして、2018年3月告示の改訂学習指導要領の高校地歴科世界史(新科目・世界史探究)が目指す「史料を活用した課題追究型授業」モデルを開発して地歴科・社会科教員に向けて発信し、授業実践力の向上に資することである。 2020年度は新型コロナ感染症の流行・拡大により、海外調査と国内調査の実施が困難になったため、学校を訪問しての授業の収集と調査、博物館・資料館を訪問しての教材調査、学会等での発表を行うことが出来なかった。 そのため、2020年度はこれまでに調査した資料と執筆した論文の整理を中心に行った。その結果、「ESDと世界史学習」、「地域世界と世界史前近代史学習」、「地域と世界史近代史学習」、「文明と世界史学習」、「 探究的世界史授業のデザイン」、「日本の小学校社会科歴史授業」、「日本の中学校社会科歴史授業」、「日本の高校地歴科歴史授業」、「アメリカの高校歴史授業」の内容を論文としてまとめることが出来た。 刊行物の研究成果としては、雑誌『教育科学 社会科教育』739(2020年11月号)に「ヒト・モノ・コトで考える歴史授業-コト:マゼランの死、1521年4月27日、セブ島-」を掲載した。また、2021年3月には、共著『大学生のための初等社会科概論』(風間書房)を刊行した。また、ホームページ「世界史授業アーカイブ」を運用して、世界史授業にかかわる情報の発信に努めた。ホームページの運用は、コロナ禍の中で対面が困難になった状況下で有効な情報伝達ツールとしての機能を果たすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の流行・拡大により、対面での接触を必要とする調査活動の実施が困難になった。米国での調査については、新型コロナ感染症の蔓延のために渡米できなかった。また、国内の学校を訪問しての授業の見学と調査についても、実施を予定していた学校からの延期を求められたこともあり、実現までには至らなかった。学内においては、遠隔授業に対応するための授業準備の時間が大幅に増大し、科研研究を進めるための時間を確保することが困難であった。これらの理由により、本研究の進捗は大幅に遅れることになった。 そのため、2020年度はこれまでの研究成果を整理することに重点を置いた。2021年度に予定している学術図書の刊行に向けて、これまでに調査した資料の整理と執筆した論文のリライトを行い、その内容を10編の論文としてまとめることが出来た。これらの研究成果は、学術図書として刊行することを計画している。 調査活動は遅れることになったが、研究成果の整理については進捗がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究については、2020年度の研究の遅れを取り戻すべく、学校を訪問しての授業見学と調査・収集、博物館・資料館等での教材の調査・収集を再開する。そして、高校地歴科世界史探究の授業を中心とした中・高校の社会科歴史分野や歴史授業の見学と調査・収集、記録化を進める。2020年度に実施できなかった米国での調査(学校等での授業見学と調査・収集、博物館・資料館等での教材発掘、学会等での研究動向の調査)については、新型コロナウイルス感染症の流行の終息が見られたならば、年度後半の実施を目指して準備する。そして、先進的な歴史授業の見学と調査・収集、記録化に努める。 2021年度も新型コロナウイルス感染症の流行が続くことが予想されるので、Zoom等の遠隔会議システムを積極的に活用し、対面での調査や情報収集を補完する。 2021年度は、科研研究の最終年度(3年目)であるため、2020年度に整理した科研の研究成果の刊行(学術図書の刊行)をめざす。刊行予定の図書では、地歴科世界史を中心とした「史料を活用した課題追究型授業」の具体例を提示し、地歴科・社会科教員に向けて発信し、現場教員の授業実践力の向上に貢献することを目指す。同時に、筆者の運用しているホームページ(世界史アーカイブ)にもその成果の一部を公開し、情報の発信に努める。これらの活動を通じて、世界史探究を中心とした高校地歴科と中学校社会科歴史授業のデータベース化を進める。研究成果を教科教育(地歴科教育・社会科教育)系学会で発表・報告し、研究成果の発信と普及に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行により国内外での対面での調査活動が出来なかった。また、大学での遠隔授業の準備と実施に追われ、科研研究の遂行に対して多大の困難が生じた。国内および米国での調査活動や授業・資料収集、学会参加などを予定していたが、渡米が困難であったために実施には至らなかった。そのための旅費や調査費等が未執行となった。 2020年度は、大学での遠隔授業の準備と実施、学内校務の増加により、科研研究のための時間確保が困難であった。また、リモートによる調査活動や研究環境の整備についても、十分な準備が出来なかった。そのため、研究用資料・研究書の購入、遠隔会議用のPCカメラ、マイクなどの研究環境の整備のための費用が未執行となった。 2021年度も新型コロナウイルス感染症の流行が続くことが予想されているので、Zoom等の遠隔会議システムを用いたリモートの会議や調査が必要となることが予想される。そのため、次年度の使用計画として、リモートの調査活動を円滑に進めるための新型PC、PCカメラ、大型モニター、マイク等の整備に充てたいと考える。また、2020年度に実施できなかった国内および米国での調査活動と資料収集を再開する必要がある。そのための旅費や調査費等を計上する。
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備考 |
2015年度~2018年度科学研究費助成事業・基盤研究(C)「高大連携による『21世紀型能力』育成を目指す世界史単元開発とデータベース化」の助成を得て開設した。この度、2019年度~2021年度科学研究費助成制度・基盤研究(C)「地歴科教員の史料を活用した課題追究型世界史授業の開発を支援するための研究」の助成を得ることが出来たので、引き続き「世界史授業アーカイブ」を運用することにした。
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