研究実績の概要 |
以下の3つの観点から,音楽科新人教師育成プログラムを検討した。 ①熟練教師のライフヒストリー研究にもとづき検討した。音楽科における熟練教師の力量形成の構造は,ターニングポイントを経ながらの「音楽科授業観の萌芽の形成→音楽科授業観の再構成」という過程として説明することができた。この研究の延長線として,コロナ禍における新人教師育成プログラムを検討した。さらには,音楽科における教師の実践知の再構成とは,「音楽の技能的側面,音楽に対する興味・関心の側面のどちらを優先させるのかあるいは調和させるのか」,「併せてそこに他の観点をも加えるのか否か」というような複合的なテーマの組み替え作業であるという命題についても再検討した。 ②音楽科授業を成立させる鍵として,状況把握や判断の重要性に関して実践知モデルを示し論を展開した。アイスナー(Eisner,E.W.)の,「教育的鑑識」(授業中に起こる様々な出来事の本質を捉えることは,教育をする上での鑑識であるという考え方)を基盤として教師の実践知(状況把握,判断)を考察した。多くの先行例を詳解しながら,熟練教師の音楽科授業成立の鍵を新人教師教育に援用した。 ③新人教師育成プログラム開発に向けた指針を,音楽科授業における教師の実践知解明の観点から提示した。実践知解明に関して,「実践の省察において意味づけ可能な次元」と,「実践の中でしか具現化し得ない次元」の両者を視野に入れ,方法論の検討を行った。多数の解明法の中でも,再生刺激法およびオン・ゴーイング法の可能性が示唆された。併せて,研究者の分析能力を研ぎ澄ますことも論究した。
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