研究課題/領域番号 |
19K02893
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
福石 賢一 高知工科大学, 共通教育教室, 准教授 (60294485)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 汎用的能力 / 専門知 / 工学 / ケンブリッジ大学 / 歴史 / カリキュラム / 進路 / イギリス |
研究実績の概要 |
本研究課題初年度に当たる本年度は主に以下の2点に関して調査研究を行った。 第一はケンブリッジ大学の工学教育全般に関するもので、まずこの点に関する先行研究の収集を行いつつ内容の確認を行った。この作業を通じて工学の優等学位試験や教授職の創設とその他スタッフの配置といった組織・制度的側面、カリキュラム(数学優等学位試験等他のコースのカリキュラムとの調整を含む)や教育方針並びにそれらをめぐる議論、学位試験の構造や出題内容等の変遷を整理した。 第二はケンブリッジ大学工学優等学位コースの創設初期に当たる1890年代の優等学位取得者のうち、最上級の成績(First Class)を収めた者の出自と卒業後の進路をその他の主要なコースにおける同様の者たちのそれと比較し、以下のことを明らかにした。すなわち19世紀末のケンブリッジ大学には工学の他に実業界との一定の関係を想起しうる数学や自然科学の優等学位コースが存在した。しかし最上級の成績で工学優等学位を取得した者たちの約半数が実業界に進んだのに対し数学や自然科学のコースの同等者で実業界に進んだ者の割合はいずれも1割程度以下であり、実業界への卒業生の輩出率において工学優等学位コースは他のコースに対し顕著な特徴を有していた。一方出自に関しては、父親の職業が確認できた者における実業界出身者の割合は工学で約半数であったのに対し、数学と自然科学ではそれが2割ほどに過ぎず、この面においても工学コースは他のコースと比較して実業界との間により強い関係を築いていたと思われる。 なお、上記のうち第二の内容について学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はまず主に国内に所在する先行研究に依りながら研究課題に関する既知の情報を整理し、その上でイギリスにおいて一次史資料及び二次資料を収集し、その内容の整理・分析を行う予定であった。このうち前半の作業についてはおおむね予定通りに行うことができた。しかしながら年度の後半から末にかけて新型コロナウィルスの感染が世界規模で拡大し海外調査はもとより国内調査もままならない状況となった。このため年度末に予定していた資料調査・収集が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ケンブリッジ大学工学優等学位コースの教育と卒業生に関する調査研究を併行して進めていく。当面は手元資料、郵送等により入手可能な資料、Web経由で利用可能な資料・情報を用いて調査研究を進めつつ、新型コロナウィルスに係る状況を見極めながら国内調査並びに海外調査を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外資料調査及び国内資料調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により実施困難となったため。
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