要支援児は、他者との比較から自己能力を不当に低く評価し、効力感低下を招いて活動性が全般に低下した。要支援児には没頭できる活動によって発揮された能力から適正に自己を評価する機会が有効であった。小学1年生から3年生までは過去の自分と比較して能力の伸長を根拠に自己を肯定的に評価し、承認していた。一方、4年生から6年生は、他者との比較により自己評価・承認は低下した。自己評価や承認が低下した児童の特徴には、事実判断に先行して価値判断を行う傾向があり、行動改善に至る思考過程を阻害した。適正な自己評価・承認を得るために事実判断と価値判断を分けて思考する方法を学ばせること等、学年進行に伴う学級経営の要点が得られた。 上記の知見に基づき学級経営に際しては、学習活動や学級・学校生活において出会う出来事を理解する様式において、事実判断を丁寧に行い、その後で価値判断することの重要性が示された。このような様式の認識を習得するための教師の介入が必要かつ有効である。具体的には、Q-Uにより得られた類型化(満足群・侵害行為認知群・非承認群・不満足群)に従い半構造化面接を実施して児童の評価判断を問うことで、個別に介入する手がかりが得られる。また、学級担集団に共通する傾向や関心ごとについての資料が得られる。これにより、児童の個別性に即して実感を伴った理解のための介入が有効となる。加えて、判断に用いた事実の理解には、事実判断と価値判断を分けて理解を進める認識の枠組みの獲得が、不当に自己認識を下げて活動性低下に至る悪循環を避ける、脱出することに重要と思われた。学習場面での理解や学級・学校生活での出来事の理解など、事実に即してその価値を理解していく様式は特別なものではなく、通常の学習においてその機会も多くある。これらの機会に、事実判断と価値判断を分けながら具体的に思考していく方法を強調していくことが必要と思われた。
|