研究課題/領域番号 |
19K02984
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岸 磨貴子 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (80581686)
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研究分担者 |
青山 征彦 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (60337615)
今野 貴之 明星大学, 教育学部, 准教授 (70632602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パフォーマンス心理学 / インプロ / フィリピン / VR / アクションリサーチ / アクターネットワーク論 / 高等教育 / ミャンマー |
研究実績の概要 |
2019年度では、計画した通り、文献調査、アクションリサーチ、教材開発の3つの観点から、研究を進めることができた。 文献調査について、研究協力者の青山を中心に、教育におけるアクターネットワーク論の文献調査を進めた。国内のアクターネットワーク論に関する論文を収集し、レビューを開始した。本研究において関連する文献を研究グループで輪読し、理論についての理解を深め、研究方法について検討をした。 アクションリサーチとして、3つ実践を行った。1つめは、共同研究者の今野が、明星大学にてVRを活用した教育実践活動を実施した。この取り組みを通して学生らが大学の環境の様々な可能性を切り開きながら、活動を生み出していくことが明らかになった。2つめは、研究代表者の岸が明治大学において、様々なテクノロジーを活用した日本とベトナム・ミャンマーの学生の協働実践を行ったことである。やり方のわからないこと、経験したことがないことを進めるために自らの環境を作り替えながら協働で映像制作を完成させた。これらの2つの事例をもとに、学習者のエージェンシーが発揮された環境についてICTの配置の観点から今後論文としてまとめていく。3つめは、学生のフィリピンにおけるフィールドワークである。学生7名がICTを多様な形で活用しながら現地の人との会話や活動をはじめたプロセスやその時の環境について、観察および帰国後のインタビューを通して明らかにした。 教材開発について、試行と改善を重ね、案をつくることができた。場の可能性を切り開きながら、会話や活動を生み出していくためには、学生たちの学びに対する認識と身体と環境との関わりを変えていく必要がある。そこで、パフォーマンス心理学の知見をもとに、経験したことがないこと、やりかたがわからないことから「生み出す学び」を体験できるインプロの研修のための教材開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り、2019年度では、計画した通り、文献調査、アクションリサーチ、教材開発の3つの観点から、研究を進めることができた。 文献調査については、教育におけるアクターネットワーク理論の文献をおさえるのと同時に、アクターネットワーク理論そのものの理解を共同研究者間で共有できた。またアクターネットワーク論の限界として「主観性」の視点が含まれていないという批判について検討できたため、アクターネットワーク論の限界をふまえつつも、実践者の主観性をいかに含めながら教育環境を描いていくか、今後の研究の問いも明確になった。 アクションリサーチに関しては、研究の成果を実践の当事者である学生自身と共同で学会で発表することもできた。 教材開発については、新型コロナの影響を想定し、オンライン研修でも利用ができるような教材の開発にも着手した点においては、当初の計画以上に進んでいるといえる。 ただし、予算執行については、オンライン会議を多用するなどしたことから、予定していた予算を執行せず来年度に持ち越すことになった。予算を予定通り執行しなかったことから遅れた研究はないため、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も同様に、文献調査、アクションリサーチ、教材開発の3つの観点から、研究を進める。 文献研究についてはおおむね完了をしているので、新たな文献を収集しつつ、アクターネットワーク論に近い理論などにも文献調査を広げていく。 アクションリサーチについては、引き続き実施するが、新型コロナの影響で予定していた海外フィールドワークなどの実施ができない可能性がある。そのため、オンラインでできる活動へと実践の予定を変更できるように調整していく。 教材開発については、実践を通して検証し、さらに改善をしながら完成に向けて進めていくが、検証のための実践ができない可能性があるため、オンライン研修へと切り替えて、実践する。すでにオンライン研修のためのコンテンツ制作に取り組んでおり、5月には、開発した教材を使った第1回目の研修を実施する予定である。その後も継続的に開発した教材の検証と改善を重ねて、2020年度に完成をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響をうけ、2月-3月にかけて予定していた出張をとりやめ、オンラインビデオ会議を使って実施したため、予定していた予算の一部を執行せず、次年度に繰り越しすることになった。しかしながら、2019年度に計画をしていた研究についてはおおむね予定どおり進めることができた。予定していた支出は2-3月に収集したデータを分析するため、研究チームで集まって研究合宿をするためのものである。収集したデータの分析については、オンライン会議でで少しずつはじめており、成果を2020年度に出す予定である。また、今後もオンラインでの会議が続くようであれば、オンライン上で本格的に分析や研究会議ができるように、研究に必要な機器やソフトの購入に次年度当てていく予定である。
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