研究課題/領域番号 |
19K03042
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
服部 宏己 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 教授 (50510476)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 建築構造教育 / 可視化 / 塑性領域 / デジタル画像相関法 |
研究実績の概要 |
本研究は、応力分布を可視化することを目的として一連の教育ツールの開発を行ってきた。これまでは弾性領域の静的な挙動にのみ対応し、建物が倒壊する際に扱う塑性領域や動的な地震応答時の挙動には対応していない。そこで、近年新たに開発されたデジタル画像相関法(デジタル撮影された微小な変形画像を比較することによって、ひずみ量などを解析し分布を図化する技術)を応用して、塑性領域や地震時の設計法など高度な知識を修得するための可視化するツールを開発することを目的としている。 今年度は、デジタル画像相関法(以下、DIC)の構造教育ツールへの適用性について、基礎実験として主に弾性領域について検討した。実験要因は、試験体材料の硬度、試験体高さおよび縁応力の大きさとした。単純梁架構の試験体を集中載荷し、デジタルカメラで連続撮影した画像をDICにより画像解析しひずみ分布画像を求めた。次に載荷実験と同条件でFEM解析(弾性)を行い応力分布画像を求め、両者の分布画像を比較した。載荷荷重は、塑性領域の範囲においても検討するため、最終的には試験体が破壊するまで載荷した。 その結果、1) 弾性領域ではDICによってひずみ分布を可視化することができ、硬度が60~80程度ではその精度の差は見られない。2) 試験体高さ40㎜および80㎜試験体では、上下縁応力の大きさにかかわらずひずみ分布を精度良く表すことができるものと思われる。3) 試験体高さが小さい場合は、上下縁応力の大きい範囲で適用する必要がある。4) 圧縮側および引張側それぞれのσ-ε関係を用いた塑性解析と比較した検討が今後さらに必要であることを明らかにした。 これらの結果は、「塑性領域を対象とした建築構造教育用ツールの開発に関する研究 (その1:デジタル画像相関法(DIC)を用いた基礎実験)」と題して、2020年度日本建築学会大会(関東)学術講演梗概集に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究計画では、整形な試験体に対して、万能試験機を用いて弾性領域から塑性領域に至るまで静的載荷実験を行い、DICによる応力分布の可視化を試み、弾性領域において概ね妥当な値が得られた場合は、塑性領域までの曲げ・せん断実験を行い、FEM解析値との比較によりその妥当性を検証することとしている。 弾性領域の実験においては、万能試験機による実験画像をDICによって画像解析し、一方で同条件によりFEM解析を行い、両者を比較することによって、DICによる画像が適用できる(ひずみ分布を可視化できる)ことを示した。 塑性領域においては、同様に両者を比較し画像に差が見られたことから、塑性解析を行う必要があることを今後の課題として提示した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、令和元年度に得られた実験値およびFEM解析値について、両者にどの程度の相関性があるかを数値を用いて明らかにする。すなわち、材料の硬度、試験体高さ、上下縁応力の大きさの違いによる影響について、各試験体をグリッドに分割し、そのグリッドごとのDICによるひずみの平均値とFEM解析による応力の平均値を求め、両者の相関性の精度について明らかにする。 また、塑性領域においては、試験体が破壊するまで荷重をかけ、塑性領域のDIC画像と弾塑性FEM解析による結果を比較する。ここで、DICソフトはこれまでひずみ分布画像を表示していたが、新たに応力分布が表示できるかを確認したのち、両者を比較する予定である。 塑性領域においてもDICの適用性が明らかになることによって、効果的な種々の構造教育ツールの開発に繋げることができるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、デジタルビデオカメラを購入する予定であったが、入手することができたため試験体材料のみの購入となった。次年度は、FEM解析ソフトを購入する予定であったが、現状で入手することができた。一方で、デジタル画像相関法の画像解析ソフトを無料で使用できる予定であったが、応力分布を表示できるソフト(約100万円)が必要となったため、購入する予定である。
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