研究課題/領域番号 |
19K03200
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
松本 友一郎 中京大学, 心理学部, 准教授 (30513147)
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研究分担者 |
吉田 琢哉 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (70582790)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織 / silence / voice / 多元的無知 / 沈黙の螺旋理論 |
研究実績の概要 |
組織におけるコミュニケーションには組織内の問題に関するvoice(発言)とsilence(沈黙)という表裏一体の関係がある。本研究では組織内において従業員の間で残業などに対するsilenceが維持される要因について検討することを目的としている。本研究は,研究1.社会人を対象とした仮説モデルの検討,研究2.学生を対象とした仮説モデルの検討,研究3.社会人を対象としたvoiceにおける多元的無知という現象の検討の3部で構成されている。1年目である2019年度は,研究1の一部を実施した。 研究1は2つの調査で構成される。調査1は,登録モニターを有する調査会社に委託し,全世代の社会人を対象に実施した。具体的には,①voiceに対する自身の態度,②voiceに対する他者の態度,③組織内における自身の意思表示の程度(やむなき事情による残業の拒否等,各トピックについて),④各トピックに対する組織内の他者との意見の相違について回答を求めた。さらに,日本社会一般の意見に対する推測,社内の組織風土について測定した。調査1の分析の結果,残業や有給休暇といったトピックの内容にかかわらず,全体的に自分より他者態度の推測の方が有意に低い,つまり,組織内における意思表示について他者は自分よりも受容的ではないと認知されていることが示された。ただ,組織内の他者についてだけでなく,日本社会一般の意見に対する推測でも同様の結果が見られた。これは当初の仮説とは異なる結果であり,想定していた以上に旧来の規範が強く影響している可能性を示唆している。調査2では,個人が組織内のsilenceの規範に巻き込まれる過程を追うため,入社直後の4月から1年ごとに縦断調査を実施する。調査2については,新卒社会人を対象に1回目の調査を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では新卒の社会人を対象とした縦断調査である調査2の1回目を先に実施し,その成果を学会発表等で公表する予定であった。しかし,調査2の前に全世代を対象とした横断調査(調査1)で傾向を把握する必要性が明らかになった。そのため,調査を実施する順番を入れ替えて調査2を後に回したことにより,調査結果の公表が遅れている。なお,ここでの調査番号は計画変更後の調査の順番に合わせている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の調査2はデータの回収を継続する。既に得られた調査1のデータについては,学会発表で公表する予定である。しかし,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,学会の開催中止が相次いでいる。そのため,公表のタイミングをさらにずらす,学会発表はせずに学術雑誌への投稿に踏み切る等,対応を検討する。研究2の中高生,大学生を対象とした調査も実施予定であるが,これも学校が再開されなければ回答の依頼ができない。そのため,回答の依頼からデータの回収まですべてオンラインでできるよう検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画を変更し,縦断調査である調査2の1回目を横断調査である調査1の後に回した。そのため,結果の公表のタイミングも遅れ,学会発表に必要となる参加費,旅費等を使用しなかった。その分を次年度に使用する。次年度は,学会発表の参加費,旅費の他,当初の計画通り,調査用のタブレット端末,調査補助の雇用等に使用する予定である。また,縦断調査である調査2の回答者への謝礼としても使用する。
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