研究実績の概要 |
本研究は,他者の感情,意図,状況などを読み取る「解読力」を測定するための,日本人用の課題遂行型テストを作成することを目的としている。課題遂行型テストとは,実際に刺激を呈示され,その刺激人物の感情状態や意図等を判断する形式のテストである。 2019年度には,国外で使用されている既存の課題遂行型解読テスト(PONS: Rosenthal, Hall, DiMatteo, Rogers, & Archer, 1979,IPT: Costanzo & Archer, 1989,DANVA 2 : Nowicki & Duke, 1994,GERT: Schlegel, Grandjean, & Scherer, 2014など)について整理し,各テストの特徴について文献のレビューに基づき検討した。いずれのテストも多くの先行研究で信頼性と妥当性の確認が行われていることから,それらの知見を利用することは効率性および効果性という観点から有益であると判断された。したがって,信頼性・妥当性が保証されている既存のテストをベースに,日本人用に改良するという手続きを採用し,日本人用解読テストを作成することとした。 まず,Geneva Emotion Recognition Test (GERT-S; Schlegel & Scherer, 2016)という顔や声や体の動きから他者の感情を読み取る能力の個人差を測定するテストについて,教示文や選択肢等を日本語に翻訳し,日本人参加者に実施した。このテストの刺激人物は10人のCaucasianであり,刺激動画には音声が含まれているが,無意味語を話しているため日本人にも実施可能であった。解読力や対人コミュニケーションに関する複数の他指標もあわせて測定したが,2019年度には詳細な分析までは進めなかった。
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