研究課題/領域番号 |
19K03300
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
大澤 香織 甲南大学, 文学部, 准教授 (30462790)
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研究分担者 |
伊藤 大輔 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (20631089)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トラウマ / 初期支援 / コンピテンス / 教育・研修 |
研究実績の概要 |
災害や事件・事故など,体験したトラウマによって心の健康を損なう前に行う初期支援(トラウマ初期支援)ができる実践家への要請が高まっている。しかし,トラウマ初期支援に必要な能力(コンピテンス)について検証されておらず,効果的なトラウマ初期支援を実現するための教育・研修に必要な基礎情報が不足している。トラウマを体験した人の身近な支援者となりうる一般の人々(家族等)に対しても,適切なトラウマ初期支援を可能にする教育の機会の提供が求められるが,それに要する基礎情報も不足している。 これらを受けて,当該年度では,本研究課題の研究目的①「実践家と一般の人々それぞれがトラウマ初期支援に求められるコンピテンスについて,その構成概念を検証する」を果たすべく,研究1(2019~2020年度に実施予定)として,実践家および一般の人々に必要なトラウマ初期支援におけるコンピテンスの構成概念を抽出・整理することを試みた。構成概念の抽出・整理を目的に,トラウマ支援の経験が豊富な実践家を対象に調査を行う予定であったが,その事前準備としてトラウマ初期支援に寄与すると考えられる最新の研究文献から情報整理を行う中で,構成概念の抽出方法を再度検討する必要性があると考えられた。研究分担者や他のトラウマの専門家に協力を要請して抽出方法の再検討を行い,その上で必要な調査を試みる予定でいたが,その途中で新型コロナウイルスの影響を受けて,これらの実施が困難な状況となっており,現在に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では研究を進める中で,トラウマ初期支援に求められる構成概念の抽出方法について再度検討する必要性が生じることとなった。抽出方法の再検討を行い,その上で必要な調査を試みる予定であったが,途中で新型コロナウイルスによる影響を受け,これらの実施が困難な状況となってしまい,現在もその状況が続いている。当該年度内にこのような想定外の事態が生じ,その対応のために研究遂行が滞ってしまっていることが,本研究課題の進捗が遅れている主な理由として挙げられる。 もう1点,本研究課題と同時に,最終年度となった若手研究(B)の研究課題にもエフォートを費やさなくてはならず,結果的に本研究課題に割けるエフォートが予定よりも減ってしまったことも理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では,計画していた研究1(2019~2020年度)を実行する初年度として,実践家および一般の人々に必要なトラウマ初期支援におけるコンピテンスの構成概念を抽出・整理することを試みた。その中で,構成概念の抽出方法について再検討する必要性があると考えられたが,当該年度内に再検討を行い,調査実施へと研究を進めることができなかった。そこで,2020年度ではまず,トラウマに限らず,幅広くメンタルヘルスへの初期支援に関する先行研究を参考に,構成概念・要素の抽出方法について再検討を行う。その上で,実践家と一般の人々に必要なコンピテンスを構成する概念の抽出と整理,および各々の構成概念の必要性の検証を目的に,トラウマ支援経験者を対象とした調査を実施する。データ収集は,新型コロナウイルスの感染拡大防止に十分配慮する必要もあるため,基本Web調査で行う予定である。構成概念の抽出・整理とデータ分析は,認知行動療法の実践家養成に必要なコンピテンスの研究に携わってきた研究分担者の助言を受けつつ,研究代表者が主に行い,予定どおりに研究1を完了することを目指す。 研究1の結果に基づき,トラウマ初期支援に要するコンピテンスを高める心理教育プログラムの試作を行う(研究2,研究3)。新型コロナウイルスの感染状況を見て,感染拡大予防に配慮しつつ,可能であればプログラムの試行まで研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に必要な事務アルバイト雇用,研究協力者への謝金にあてる予定であった経費が,研究代表者の所属機関の雇用条件により,当該年度は人員の確保とアルバイト雇用が難しかったこと,研究協力者の遠方での就職が決まり,研究協力を得ることが困難となったことを理由に,当該年度では使用されなかった。このことが,次年度使用額が生じた理由の1つとして挙げられる。事務アルバイト雇用,研究協力者への謝金については,次年度に向けて目途がたったため,次年度以降は予定通りに人件費・謝金の支出に研究費を充てる。 もう1点,次年度使用額が生じた理由として,研究に資する情報収集を目的に渡航する予定であったが,新型コロナウイルスの影響により渡航を中止せざるを得なくなり,その分にあてる予定であった旅費が使われなかったことも挙げられる。 新型コロナウイルスによる影響を考慮し,次年度に行う研究1のデータ収集はWeb調査を基本とする予定である。アンケート調査会社に調査を委託する際の費用は当初予定していなかったことから,次年度使用額は主にこの経費に充てることを計画している。
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