研究課題/領域番号 |
19K03321
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
石井 宏祐 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (30441950)
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研究分担者 |
岡田 洋一 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 教授 (20369185)
石井 佳世 熊本県立大学, 共通教育センター, 准教授 (00551128)
松本 宏明 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (90625518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アディクション / 嗜癖臨床 / 脱嗜癖的な支援 |
研究実績の概要 |
当該年度に公表した研究のうちの1本である「当事者によるアルコール依存症からの回復の物語を配偶者はいかに経験するのか」では,アルコール依存症の当事者が語る「回復の物語」を配偶者がいかに経験するのかについて,半構造化面接法によるインタビュー調査を行い,得られた語りを記述的現象学的分析によって検討した。一組の夫婦を対象とし,当事者である夫の語りもふまえて妻の語りの記述を行った。その結果,自助グループ等での語りが媒介となり夫婦の対峙的なコミュニケーションを助けること,自助グループ等での当事者による語りは一見繰り返される同じようなものであっても,当事者にとっては毎回少しずつ変化を感じるが,配偶者にとっては長い年月をかけて認識の転換ともいえるような大きな変化を感じるようになるものであることなどが示唆された。 石井・石井(2019)はアルコール依存症当事者からのDVサバイバーの語りを分析し,その結果,アルコール依存症当事者の配偶者であるサバイバーは,当事者の飲酒時期のみならず回復過程の様々な段階で苦悩を経験しており,当事者理解だけでは家族支援には不十分なことが示唆された。たとえば回復プロセスが軌道に乗った当事者が安定していく陰で,家族はその「回復の物語」の語られ方に不安や不満をおぼえるといった乖離もみられた。 これまで,その緊急性から当事者本人の研究が主流であり,家族に焦点を当てた研究であっても「当事者の支援者としての家族」の研究であった。本研究はこれらの問題意識から,当事者の「回復の物語」について,家族が支援者としてではなく,困難な暮らしを続けてきたその人そのものとしてどのように語るのかに着目したものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により,当初予定よりもインタビュー調査の実施が滞った。しかし,感染対策を厳密にできる状況が作れたことにより実施できた調査もあり,それらについては分析し,学会発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により実施できなかった調査を重ねていく予定である。それらをもとに論文執筆と公表まで年度内に実施できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりインタビュー調査ができず出張経費や人件費が抑えられ,それに加え研究成果公表のための出張旅費が抑えられたため。 翌年度は,コロナ禍が落ち着き,インタビュー調査の再開や対面による研究成果公表の場が戻ってくるなど,当初予定通りの支出が見込まれる。
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