研究課題/領域番号 |
19K03325
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
金築 智美 東京電機大学, 工学部, 教授 (40468971)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過剰適応 / セルフ・コンパッション / 相反する自己 / 援助要請スタイル / ロールレタリング |
研究実績の概要 |
令和2年度では、過剰適応の高低と自己への思いやりの有無が、内的適応(本来感、自己受容感)に与える影響を調べることを目的に、令和元年度に続き、以下の3つの研究を行った。なお、本研究を行うに当たって、予め東京電機大学のヒト生命倫理審査委員会にて承認を得て実施した。 <研究1> 令和2年度では令和元年度の研究結果を踏まえ、過剰適応の高低と自己への思いやりの高低を組み合わせた4つのタイプにおける相反する自己のポジショニングの違いによる本来感の差異についてデータ解析を行った。その結果、過剰適応と自己への思いやりが共に高い場合には、過剰適応者で、かつ自己への思いやりが高い場合と比して、他者の期待に応えたくない自己(私①)が他者の期待に応える自己(私②)よりも本来感が高かった。以上から、過剰適応者で自己への思いやりが低いと、異なる自己間における心理的葛藤をより有していることが示唆された。 <研究2> 過剰適応者の他者から援助を受けることに対する認知と行動的特徴を調べるために、Web調査を実施した。その結果、過剰適応者は、他者からの援助への肯定的態度が低く、疑念と抵抗感を有していることが示された。また、他者からの援助に対して回避的スタイルを多く用いていた。 <研究3> 過剰適応が高く、自己への思いやりが低い者を対象としたロールレタリングの短期的介入プログラムを作成した。「ありのままのあなたのことを無条件に受け入れてくれたり、優しく思いやりを持ってくれる人」である「理想的な聴き手」を具体的に作り上げ、それを想起した上で、過剰適応場面における認知や感情に焦点化した往信と返信を各1回ずつ施行する内容であった。介入前後には、肯定的・否定的感情を測定できる指標、自己受容感および本来感を使用した。ただし、実験参加者数が不十分であったため、令和3年度にも引き続き同様の介入研究を実施する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナ感染拡大による影響のため、過剰対象者を対象とした対面による介入研究を行うための環境を整えることが難しかった。そのため、実験開始時期に遅れが生じたことで、当初想定していた通りの実験参加者数を募ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、令和2年度に作成した過剰適応者に対するロールレタリングの介入プログラムをさらに多くの実験参加者に対して行い、データを積み上げ、解析を行うことを予定している。また、長期的な介入プログラム作成に着手し、実験参加者の募集から介入への足掛かりを得る。さらに、令和2年度の研究成果を、日本心理学会およびINTERNATIONAL CONGRESS OF COGNITIVE PSYCHOTHERAPYにおいて発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、海外渡航が難しい状況にあるため、実質的な旅費が未使用な状況のままである。そのため、可能な限り、国際学会のオンライン開催への参加を予定し、本研究課題の既に遂行した研究発表や関連のある知見を得る場を設ける予定である。また、本務校がオンライン授業を行う都合上、大学生を対象とした実験参加を通常通りに行うことが難しいことが考えられるが、長期的介入の実施は新型コロナの感染状況を見ながら行うかどうかの判断を下すことを考えている。対面での実験が難しいことも想定されるため、Web上での介入が可能かどうかも模索する。介入実験が滞りなく進められた場合には、人件費の予算を、実験参加者への謝礼に充てる計画である。
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