本研究課題では、代数多様体のレギュレーターとL関数について研究を行った。 有理数体上で定義された代数多様体のモチヴィックコホモロジーから定まるレギュレーターおよびp進レギュレーターは、L関数の特殊値を表すと予想されているが、一般解決への道のりはまだまだ険しい。本研究では、この予想の一般解決は時期尚早と考えており、予想攻略のための戦略として、さまざまな特殊多様体に焦点を当てた研究を行った。特に、超幾何関数に関連した特殊多様体を超幾何モチーフと名付け、詳しく研究した。 最終年度における研究成果は、千田雅孝氏(東京電機大学)と共同で、楕円曲線のモチヴィックコホモロジーから定まるp進レギュレーターの数値計算法の確立したことである。一般に、p進レギュレーターを具体的に計算する方法は知られておらず、楕円曲線だけに限っても、計算できる例はあまり知られてなかった。今回、一定の良い条件の下でなら、いつでも数値計算することができるようになった。これにより、p進L関数の特殊値との数値比較が大量にできるようになり、こうして、数多くの場合にp進ベイリンソン予想の数値検証に成功した。この成果は、論文として2023年に出版済みである。 研究期間全体を通じて、本研究課題では、上述の超幾何モチーフのレギュレーターと周期積分を中心に、数多くの成果をあげた(いくつかは投稿中)。また、2019年度と2022年度に、北海道ニセコ町において、研究集会「L functions and Motives in Niseko」を、大坪紀之教授(千葉大学)、佐藤周友教授(中央大)、安田正大教授(北海道大学)と共同開催した。国内外から多くの研究者を招待し、研究成果の発表および研究交流を行った。2回の開催を通して、本研究課題のテーマであるレギュレーターとL関数の研究の活性化を得ることができた。
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