研究課題/領域番号 |
19K03398
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小須田 雅 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40291554)
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研究分担者 |
大浦 学 金沢大学, 数物科学系, 教授 (50343380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Party Algebra / テンソル積表現 / 中心化環 / Diagram Algebra |
研究実績の概要 |
本研究の目的は組合せ論・整数論などに共通して現れる有限群Hとその部分群Kに対し、剰余類V=H/Kのテンソル積空間でのHの表現を考え、その中心化環の構造と不変式論、符号理論などとの繋がりを探ることであった。研究初年度となる令和元年度は、Hとして以前から取り扱ってきたShephard-ToddのNo.8の群, Kとして対角行列からなる位数4の群を用い, V=H/Kとしたときのテンソル積表現の分解を考えた. これは分担者である大浦氏とその学生であった今村氏との共同の研究である. シュアーワイルの手法により、既約表現の分解から中心化環を全行列環の直和として表す一般式が得られたが、既存の代数との関連については見つけられなかった。一方で、花木氏の研究するアソシエーションスキームとの関連が明らかになった。これらをまとめたものは論文にしてあり、投稿先を検討中である。 2019年8月に山梨大学にて同大学の成瀬弘氏と表現論小研究会を開催し、上記の研究の前段階の成果について報告し、出席者と今後の研究方針に関する情報交換を行った。 また、Hとして2n次の対称群、Kとして(Z/2Z)^nとn次の対称群の環積であるn次のB型のコクスター群とし、V=H/Kとした場合のVのテンソル積表現の中心化環についての研究を大浦氏および大浦氏の学生である Nur Hamid 氏の協力のもとに行ったが、こちらについては、テンソル積表現の分解までは調べられていないが、不変式論との関連でいくつか知見が得られたので、国内の雑誌に投稿中である。 その他、昨年度はトポロジー関連の研究集会、横浜国立大学における、他分野、特に量子ウォーク関連の研究者との交流、法政大学三橋秀生氏との研究討論などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要に記したように、2019年度の研究については、研究計画に記した通り、有限群HとしてShephard-ToddのNo.8の群, Kとして対角行列からなる位数4の群を選び、Hをそ部分群Kで除した空間Vのテンソル積表現の中心化環について調べた。初年度の研究としては、予定通りの計算を行い、その結果が得られたので、まとめたものを論文にしてある。その意味では概ね順調な進捗である。しかしながら、研究計画では、得られた結果と他の分野との関連、特に表現論、符号理論、不変式論との関連を期待していたのであるが、現在のところ、今まで知られていないような既存の数学の分野との結びつきを示唆する結果については得られていない。まだ計算例が少ないので、多くの計算例を集める必要がある。 一方、有限群HとしてShephard-ToddのNo.8の群, Kとして単位群としたものを、本研究以前に調べており、このテンソル積表現の中心化環については、n元集合を高々サイズ4の集合分割した場合の数と一致していることが分かっている。こちらについて、中心化環に標準基底を定め、集合分割と1対1の対応を見つけるために、Knot Thoryを真似た手法を検討していたが、中心化環の作るBratteli図形との対応を見つけるというアイディアを得て、それの検証中である。こちらはかなり見込みのある手法であり、Bratteli図形とDiagram代数の標準基底との関連については、Mathas達による先行研究があるため、これが利用できるのではないかと考えている。直接的な方法ではないが、今まで手探りであったところ、解決の緒が見つかった点は大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記したように、2019年度は、Shephard-ToddのNo.8の群を位数4の群、および単位群で除した空間のテンソル積表現を調べた。 前者は主に大浦氏との共同研究である。昨年度は計算自体は予定通りの進捗であったが、数学の様々な分野との関連については期待される結果は得られなかった。今後、共同研究者の大浦学と情報交換をとりながら、他分野との関連を調べるとともに、群Hおよび部分群Kを異なる有限群の組に変えて、計算を進める。 後者についての研究については、組合せ論との関連が出てきたことから、Mathas, Murphy, Ram, Wenzl 等の過去の研究を調べ、類似点を探る。また、Bratteli 図形から Murphy元を構成する方法は、かつて山梨大の成瀬弘氏とともに、Party代数のMurphy元を計算するプログラムを組んだことがあるので、再び成瀬弘氏と討論しながら、本研究への応用を探る。さらに H.Morton 氏は結び目の図から Murphy 元を構成することに成功しており、 Diagram 代数の Murphy 元の構成という今後の目標から、Morton 氏との研究打ち合わせも行う予定である。 今年度は、新型コロナ感染症の蔓延に伴い、研究集会自体が、中止になったり、オンラインに移行してしまっている。2020年度に入り、いくつかのオンラインでの研究集会に参加したが、講演者との質疑応答に関しては、対面とあまり変わらない状況であるが、参加者同士の討論、とくに、講演と講演の合間の休憩時間での討論というのが殆ど行われていない状態である。そして、そのような場においてこそ、研究の進展のきっかけであったことを痛感している。このような事態は今までの研究生活の中で起こり得なかった事態であり、コロナ渦の中での研究方法ついても数学者の間で情報共有するところから始めたい。
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