研究課題/領域番号 |
19K03398
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小須田 雅 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40291554)
|
研究分担者 |
大浦 学 金沢大学, 数物科学系, 教授 (50343380)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ダイアグラム代数 / Kronecker の問題 |
研究実績の概要 |
本年度は2報の論文が校了出版となった。 1つ目は琉球大学の徳重典英氏および同大学の加藤満生氏との共著論文 Extending Muirhead’s Inequality(Graphs and Combinatorics に提出)で、査読コメントに従い revise および校正を行った。同論文は2021年9月に出版された。この論文は徳重氏がハイパーグラフの研究において得られた予想について、部分的に解決したものである。証明の過程でヤング図形で記述される計算が現れており、表現論との関係が示唆されていることから、ダイアグラム代数の見地から徳重氏の予想の解決を試みたものの、全面的な解決には至らなかった。 もう1つは金沢大学の大浦学氏とPFUの今村博貴氏との共著論文 Note on the permutation group associated to E-polynomials(Journal of Algebra Combinatorics Discrete Structures and Applications に提出)で、同様に revise および校正を行った。同論文は2022年1月に出版された。この論文は主として大浦氏が従事しているE多項式の研究に現れる2次の一般線形群の有限部分群H_1について、その生成元と定義関係式の決定および指標表の作成を経てテンソル積表現の中心可環の構造を明らかにしたものである。群や結合代数のテンソル積表現の中心可環には、ダイアグラム代数として記述されるものが多くあり、この研究もダイアグラム代数として記述ができることが期待できるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響で、2020年度・2021年度において、研究打ち合わせや研究集会がキャンセルされるなどしたため、当初予定していた討論が行えず、得られた成果の検証に時間がかかっている。一方で論文の執筆や計算が主であったパソコンをカメラ付きで動画視聴がスムーズに行えるものに替えて、遠隔で研究集会に参加できるように整備したので、対面のように濃厚な議論はできないものの、多くの研究集会に参加できるようになったため、研究活動に重大な支障が出るほどとはなっていない。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は当初計画では最終年度であるが、新型コロナの影響で研究打ち合わせや研究集会がキャンセルされるなどの影響で、計算結果や証明の検証を1人で行うことが多くなり停滞気味であるが、研究集会がオンラインで開催されるようになり、遠隔地であっても移動を伴わず参加することが可能になるなど、コロナ禍の中でも研究を進める体制は整いつつある。 研究の内容であるが、今年度、大浦氏・今村氏と共同で発表した有限群H_1のテンソル積表現の中心化環については、それがどのようなサイズの全行列環の直和になっているかを示すことで一応の解決を見たが、今後は得られた中心化環自体の定義関係式がどうなっているか、とくに Diagram 代数として記述できるかどうかの解明を試みる。テンソル積表現の中心化環を Diagmram 代数として記述することは、対称群の研究で未解決の Kronecker 係数の決定問題(2つの既約表現のテンソル積がどのような既約表現の和に分解するか)を解決するための有効な手法であろうということがすでに Bowman, Visscher, Orellana 達によって示されている。 これに加えて2021年度に研究したH_1だけでなく、H_2と表される4次の一般線形群の部分群、さらにH_gと表される2^g次の一般線形群の部分群に対しても、同様に定義関係式の決定、指標表の作成、それらのテンソル積表現の中心可環の構造を明らかにし、それらが Diagram 代数として記述出来ないかを調べることを予定している。 H_g に関してはgが大きくなると途端に難しくなることが予想される。そのため、H_g についての研究と平行してシェパード・トッドの(例外型)複素鏡映群のテンソル積表現と中心化環を順に調べ、Diagram 代数として記述できるものがないかを探る予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で参加予定であった研究集会そのものが実施されなかったことと、共同研究者と対面での討論が出来なかったことで、旅費が全額余ることになった。今年度はコロナの収束状況にもよるが、概ね計画通りに研究集会への参加と共同研究者との対面での討論を行う予定である。また、所有するノートパソコンが故障したので、その買い替えに使用する予定である。
|