前年度までは、本研究課題である、有限群のテンソル積表現の中心化環とダイアグラム代数について研究し、その結果について、口頭および論文発表を行ってきたが、2023年度については、前年度までの研究を広げるために、関連分野の研究集会へ参加して、参加者とお互いの研究内容についての討論を中心とした研究活動を行った。 本研究に関して特に知見が得られたのは、5月に東工大で開かれた「Algebraic Lie Theory and Representation Theory 2023」 と 10月に早稲田大学で開かれた「表現論の組合せ論的側面とその周辺」への参加である。本研究と直接つながる研究に関するものはなかったが、対面での開催で最新の研究動向を知ることができた。中でも、岡山大学の大本-高山による研究は、故佐藤幹夫が1970年代に行った講演マヤ・ゲームの数学的理論に関する研究を交代符号行列に関連したゲームに応用するもので、代数群や量子群の表現論という本流の研究からは外れているようでいながら、本流の表現論において至るところで現れるフック長公式でゲームの良形が記述されるなど、本流との関連が示唆されていた研究を掘り起こすものであり、長く手がつけられていなかった分野の再興を示唆する研究であった。本研究の成果の1つである徳重・加藤との共著論文においても(明示はされていないものの)ヤング図形を使った計算がなされており「ヤング図形やフック長公式を通じて本研究との関連を明らかにする」ということも今後の研究課題になりうることがわかった。
本研究終了の間際2024年3月になり、2021年6月に徳重・加藤と共に出版した「Extending Muirhead's Inequality」で発表した計算結果に疑義があるとの報告を共著者の加藤から指摘され、徳重とともに計算結果の検証を行ったが、誤りは確認されなかった。
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