研究課題/領域番号 |
19K03409
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頂点作用素代数 / テンソル圏 / フィッシャー群 / マシュー群 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,レベル28のA1型アフィン頂点作用素代数の例外型拡大を用いた中心電荷24の正則頂点作用素代数の構成の構成,およびその自己同型群について研究を行った。構成法については,コセット構成法およびそのミラー拡大を経由して,テンソル圏の手法による元々の構成法と,具体的な格子に付随する頂点作用素代数から出発し,不動点部分代数をとった上でその単純カレント拡大をとる構成法の二通りの構成法が得られており,中心電荷24の正則頂点作用素代数の特徴づけを利用することで,両者が同型であることを示すことが可能である。後者の構成法は具体的である一方,既存のムーンシャイン頂点作用素代数の構成法の一部として切り出すことが可能なものであり,得られる拡大の自己同型群もムーンシャイン頂点作用素代数の自己同型群であるモンスター群の作用を既知とすれば,23次のフィッシャー群の作用を取り出すことが可能であるが,この場合,フィッシャー群が現れる本質的な理由はモンスターの存在に依存しており,モンスター群の再構成を目標とする本研究の理念とは相容れないため,前者のテンソル圏の手法による構成法から,フィッシャー群の作用を見出す研究を行った。これまでの研究から,23次マシュー群の幅11の基本集合が生成する基本アーベル2群による拡大が現れるところまではすでに示すことができていたが,これは23次フィッシャー群における極大部分群であり,これに属さない非自明な自己同型をあと一つ構成できれば,23次フィッシャー群の実現をモンスターを経由せず構成できる見通しが立っていた。今年度もこの例外的な自己同型の構成について考察した。そのためには非自明なイジング元を一つ,構成もしくはその存在の証明すればよいのであるが,抽象的な構成法であるミラー拡大における非自明なイジング元の構成が難しく,これはまだ成し遂げられていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は新型コロナウイルスの影響により,学内の業務において様々な追加対応を迫られ,年間を通じて大変忙しかったため,十分な研究時間を確保することが難しかった。また,国内外への出張も極端に制限され,満足のいく研究討論および研究情報の交換を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題ではA1型およびA2型の例外的な拡大の構成とその対称性の解析を目標に掲げたが,A2型についてはA1型と平行して扱える部分と,別課題として扱うべき部分がはっきりしてきた。平行部分についてはほぼ解明できたことから,A2型の問題については本研究課題ではこれ以上扱わず,A1型に集中する。こちらは構成法については満足の行く結果が得られているが,自己同型群の決定については非自明な部分が多く残っているため,その解明に引き続き取り組む。自己同型群を決定するにあたり,その有限性をまず示すことが肝要であるため,ここに注力して研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,研究代表者・研究分担者および研究協力者の研究集会への参加ならびに研究打ち合わせのための海外出張ができない状況が続いたため,ほとんど研究費を使用することができなかった。2022年に入ってからは各国とも入国規制を撤廃しつつあるため,次年度についてはより活発に海外研究者を訪問できるものと期待している。
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