研究実績の概要 |
粗幾何学における次元概念について、以下の成果を得た。 Bartels, Luck, Reich (2008)による双曲群に対する Farrell-Jones 予想の研究をきっかけに、equivariant asymptotic dimension (eqasdim) と呼ばれる群作用に対する次元概念が知られている。一方、Guentner, Willett, Yu (2017)は、群作用に対して dynamic asymptotic dimension (dad)を定義し、C*環の nuclear dimension へ応用した。これら2つの次元の関係については、コンパクト空間上の群作用に対し、その dad の値が eqasdim の値以下であることが知られている。しかし、それ以上はよく分かっておらず、特に、dad と eqasdim が本質的に異なるかどうかについても分かっていない。知念直紹氏(防衛大)と共同研究を行い、eqasdim に関する定理の精密化と定義の一般化を行った。これまで eqasdim はコンパクト空間上の作用に対してのみ定義・議論されていた。そのため、非コンパクトな空間上の群作用については、その空間の Stone-Cech コンパクト化へ群作用を拡張して、その作用の eqasdim を計算する必要があった。今回得た成果により、非コンパクトな空間上の群作用に対しても、直接的に eqasdim の計算ができるようになった。これによって、dad と eqasdim の値が異なる自由な作用の例の候補を特定した。その作用の dad の値は1で、eqasdim の値は2以下であることは分かっている。その作用の eqasdim の値が2以上であると予想しており、現在、その計算を進めている。
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