研究実績の概要 |
粗幾何学における次元概念である漸近次元と関わる同変漸近次元(equivariant asymptotic dimension)について、知念直紹氏(防衛大学校)と共同研究を行い、以下の成果を得た。 1. 離散群Gのコンパクト空間Xへの作用に対し、その同変漸近次元は、GとXの直積空間G×Xの開被覆を用いて定義される。Guentner, Willett, Yu (2017)は、XからGの作用する多面体Kへの"近似的に同変"な連続写像を用いて同変漸近次元を特徴付けた。しかし、その証明において定義された写像が実際に"近似的に同変"であるかが不明確であった。本研究において、与えられた開被覆のG作用に関する適切な代表元をとり、各代表元に対して適切に連続関数を定めることによって、"近似的に同変"であることが分かる連続写像を構成した。本成果について論文にまとめ、現在投稿中である。 2. 有限生成群Gのコンパクト距離空間Xへの作用の同変漸近次元が有限ならば、その値はGの漸近次元とXの被覆次元の和以下であることがSawicki (2019)によって示された。また、階数2の自由群からカントール集合への作用で同変漸近次元が無限となる例が最近Bonicke (preprint,2023)によって与えられた。任意の有限生成部分群が有限である群は局所有限群と呼ばれる。可算群が局所有限であることと漸近次元が0と等しいことは同値である(Smith (2006))。本研究において、任意の局所有限群Gのコンパクト空間Xへの作用の同変漸近次元はXの被覆次元以下であること、さらに正の整数nに対し、Xの被覆次元がnでXが(n-1)-連結であれば、その作用の同変漸近次元はnと等しいことを得た。本成果について論文にまとめ、現在投稿中である。
|