研究課題/領域番号 |
19K03490
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 哲也 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00710790)
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研究分担者 |
大槻 知忠 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (50223871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組みひも群 / オープンブック分解 |
研究実績の概要 |
三次元球面あるいはより一般に(接触)三次元多様体内の結び目の閉組みひも表示についての研究を進めた。特に、接触構造のtight性あるいは横断的結び目のloose性において主要な役割を果たしてきたright/left-veeringの概念を、多数の弧についての挙動を考えることによりtwist left-veeringという形の一般化を行った。これはinconsistency、quasi-right-veeringといったこれまでの研究で現れていた類似の概念を包括して一般化したものであり、既存の議論に比べてovertwisted diskがどのように埋め込まれているかをより詳細に記述できるため、さらなる活用が期待できる。また、overtwisted diskがより詳細に理解できるようになったことから、横断的結び目とovertwisted diskの交差の際小数(looseness)についての情報も得られることになった。さらに、twist-left-veeringの概念を少し弱めることで仮想的overtwisted性についても応用を得た。
また、組みひも表示の有限性・無限性について、これまでに知られていた結果を含む最良の形での解決を行った。証明において、先行研究と違い組み紐群の力学系的な性質、特に位相的エントロピーに着目することで、写像類群の既知の結果に帰着させ、証明は非常に簡明になった。特に、無限の組みひも表示を持つ場合、組み紐エントロピーが増大していくことが観察された。
他にも、関連し多話題として鏡像矯飾的手術の非存在についての研究を行うなど、幅広く研究を進めた。非存在が予想されている矯飾的手術と異なり、像矯飾的手術はいくつかの例が知られておいるため、その構造や分類はより難しいことが予期され、量子不変量の応用が期待できる分野である。まず初めの一歩として、ケーブル結び目の鏡像矯飾的手術の考察を行い、多くの場合に非存在を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残念ながら、接触トポロジー・量子トポロジーを結びつけるような結果は特に得られなかったものの、それそれの分野においては着実な進展があったとともに、関連した研究者との研究交流を行うなど、一定の成果があった。また、研究課題に広い意味で関連している話題として、鏡像矯飾的手術の考察を行うなど、周辺分野まで目を向けると、十分な成果を上げることができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
接触幾何方面の研究に比べ、量子トポロジー方面での研究は若干遅れ気味であるため、量子トポロジー方面またその応用に向けた研究を行う。特に、組み紐のpositivityと量子不変量の関連をより精密に調べることで、接触幾何との関連の足掛かりを得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
7月度にカナダ・モントリオールのCRMに一か月ほど滞在する際に、当初は往復の航空券代をこちらで支払う可能性があり、予算を組んでいたが、先方負担となり、航空券代が発生しなかった。また、コロナウィルスの問題で3月度に予定していた複数の出張がキャンセルとなったため、当初に計画していたよりも旅費の使用額が大幅に減少した。
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