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2022 年度 実施状況報告書

Braid群の手法による量子トポロジーと接触トポロジーの相互関連の理解

研究課題

研究課題/領域番号 19K03490
研究機関京都大学

研究代表者

伊藤 哲也  京都大学, 理学研究科, 准教授 (00710790)

研究分担者 大槻 知忠  京都大学, 数理解析研究所, 教授 (50223871)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード低次元トポロジー / 正結び目 / 矯飾的手術 / 矯飾的交差
研究実績の概要

昨年に続き、結び目のpositivityについての研究を継続した。従来の結び目のpositivityを包括的に扱えるようにpositiveの概念を拡張・一般化しする新たなクラスとして連続的概正結び目の概念を導入し、その性質をさらに発展させた。連続的概正結び目は正結び目・概正結び目の持つ多くの性質を持つことを示した。特に、連続的概正結び目の多項式不変量は様々な非自明な性質を持つことを明らかにした。また、一般化だけでなく、議論の枠組みを連続的概正結び目に一般化・拡張することにより、正結び目について帰納的な議論を行うことが可能となり、正結び目・概正結び目のConway多項式の係数について、これまでの結果の大幅な改良に成功した。

また、矯飾的手術・矯飾的交差予想についても研究を行った。鏡像的な矯飾的手術について、Heegaard Floerホモロジーを含む現在までに定義されている三次元多様体・結び目の様々な不変量の計算を経ることで、新しい有益な障害を得ることに成功した。特に、得られた障害を具体的に計算することや、その振る舞いの理論的な考察により、鏡像的な矯飾的手術の非存在をいくつかのクラスの結び目について示すことに成功した。また、矯飾的交差予想については、先行研究の手法や考えをより高次の不変量を用いて拡張することにより、より広い場合について矯飾的交差の非存在を確認することができた。

また、結び目の図式の肥沃性という性質について、接触幾何由来の不変量であるself-linking numberを活用することにより、既知の結果の大幅な改良に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

課題としていた接触構造と量子トポロジーのより直接的なつながりを得るまでは至っていないものの、これまであまり活用されていなかった量子トポロジーでの不変量を、矯飾的手術や矯飾的交点といった具体的な問題に活用することに成功した。また、接触幾何の観点から重要になる結び目などのpositivityについて、拡張を考察することにより、より一般的な枠組みを与えることに成功した。

今後の研究の推進方策

接触構造との関連からは、今回導入した連続的概正結び目が強擬正(strongly quasipositive)という性質を持つかが重要な問題となる。強擬正は接触幾何でのself-linking numberによる特徴づけが予想されているため、self-linking numberと結び目のpositivityとの幾何的な考察を進めていく。self-linking numberやThurston-Beenquin numberといった接触構造由来の不変量については、HOMFLY,Kauffman多項式といった量子不変量による評価式が存在する。このような評価式と結び目のpositivityとの関連を詳細に調べることにより、ある種のpositivityを持つ結び目について、接触構造と量子不変量との関連がより直接的に得られないかを考察する。

次年度使用額が生じた理由

国際学会について対面での参加を予定していたが、新型コロナのためオンラインでの出張となり予定していた旅費を使用しなかった。また、国内出張及び研究交流のための他の研究者のセミナー講演の依頼等も予定通りにできないことが多かった。本年度は延期されていた国内外の学会参加に予算を使用するとともに、他の研究者の招聘などを行う計画である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Applications of the Casson-Walker invariant to the knot complement and the cosmetic crossing conjectures2022

    • 著者名/発表者名
      Ito Tetsuya
    • 雑誌名

      Geometriae Dedicata

      巻: 216 ページ: -

    • DOI

      10.1007/s10711-022-00722-6

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A quantitative Birman?Menasco finiteness theorem and its application to crossing number2022

    • 著者名/発表者名
      Ito Tetsuya
    • 雑誌名

      Journal of Topology

      巻: 15 ページ: 1794~1806

    • DOI

      10.1112/topo.12259

    • 査読あり
  • [雑誌論文] On homogeneous quasipositive links2022

    • 著者名/発表者名
      Ito Tetsuya
    • 雑誌名

      Journal of Knot Theory and Its Ramifications

      巻: 31 ページ: -

    • DOI

      10.1142/S0218216522500808

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A note on HOMFLY polynomial of positive braid links2022

    • 著者名/発表者名
      Ito Tetsuya
    • 雑誌名

      International Journal of Mathematics

      巻: 33 ページ: -

    • DOI

      10.1142/S0129167X22500318

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Generalized torsion for hyperbolic 3‐manifold groups with arbitrary large rank2022

    • 著者名/発表者名
      Ito Tetsuya、Motegi Kimihiko、Teragaito Masakazu
    • 雑誌名

      Bulletin of the London Mathematical Society

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1112/blms.12784

    • 査読あり
  • [雑誌論文] On constraints for knots to admit chirally cosmetic surgeries and their calculations2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Ichihara, Tetsuya Ito and Toshio Saito
    • 雑誌名

      Pacific Journal of Mathematics

      巻: 321 ページ: 167-191

    • DOI

      10.2140/pjm.2022.321.167

    • 査読あり
  • [学会発表] Birman-Menasco finiteness theorem revisited2022

    • 著者名/発表者名
      Tetsuya Ito
    • 学会等名
      Braids in Low-Dimensional Topology
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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