非線形拡散方程式に対する自由境界問題を研究した.数理生態学に現れる外来種の侵入現象をモデルとして考えると,未知関数は種の個体数密度と生息領域であり,生息領域の境界が自由境界である.密度関数は反応拡散方程式を満たし,自由境界の動きはステファン条件によって支配される.本研究では,二つの正値安定平衡点を持つ,正値双安定な反応項を伴う拡散方程式を考え,高次元空間における自由境界問題の解挙動を詳しく調べた.重要な研究成果として,各安定平衡点に対応する二種類のspreading 現象が起こること,およびそれぞれのケースにおける自由境界の拡大速度や密度関数の漸近的形状について精確な評価を得た.
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