研究課題/領域番号 |
19K03583
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
高橋 亮 奈良教育大学, 数学教育講座, 准教授 (30583249)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 点渦系 / 解構造 / 特異極限 / 分布系 / 領域 |
研究実績の概要 |
本研究では、渦形成メカニズムを解明するために提唱された確率分布系に従う点渦系平均場方程式、決定分布系に従う点渦系平均場方程式、および単純化された平均場方程式の3つの数理モデル間の解構造の類似点・相違点を解明していく。本年度の研究において得られた主要な実績を2つ述べる。
1.上記に挙げた数理モデルの解構造を決定する上で、対応する非定常問題を研究することは重要課題の一つである。今年度は(昨年度で扱われたものとは異なる)非定常問題に対する基本的結果を導出した。具体的には、時間局所解の一意存在性、境界爆発点の非存在性、十分小さな質量を有する場合の解の一様有界性を証明した。1つ目の事項に関しては、解構造を決定すると予想される3つの要素(領域・各種パラメータ・分布系)が一般的なものであっても成立する。一方、2つ目と3つ目の事項に関しては、点渦の向きが一定という制約は必要であるが、2つの要素(領域・分布系)が一般的なものであっても成立する。
2.確率分布系に従うモデルについて得られた結果を述べる。点渦の向きが一定という制約のもと、領域に穴がある場合に対する解の存在性が部分的に得られた。第一に、単純化されたモデルに対する結果をベースにし、円環領域における解の存在性の情報を得た。第二に、円環領域における解の存在性をベースに、等角写像と比較原理を用いて、穴を1つ有する領域における解の存在性を導いた。ただし、領域が円環領域に遠ざかるほど、解構造を決定する要素に相応の制約が課されてしまう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上で述べた非定常問題に対する結果や確率分布系に従うモデルに対する結果は、本質を捉えたものとは言い難く、それを示す手法も目新しいものでない。新規性という観点からみると、本年度得られた結果はインパクトが薄いと思われる。また、本年度において質量量子化の分類の証明が完成される予定であったが、その証明は未完成のままである。さらに、決定分布系に従うモデルに対しては新しい結果が1つも得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
非定常問題については、昨年度扱ったモデルと今年度扱ったモデルの2つのモデルの間に、どのような解構造の類似性・相違性があるかを吟味する。また、定常問題については、本年度得られた結果を再検討し、点渦の向きが一定という制約が数学的にどのような効果をもつかを考察する。さらに、定常問題・非定常問題に対して、数値シミュレーションを行い、数値的な観点から当該モデルの解構造を見直す。なお、昨年度に引き続き、点渦の分布による解構造の変化を捉えるために、多成分リュービル方程式の導出およびその解の性質の研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた外国出張(海外の研究者との直接的ディスカッション)を行うことができなくなったため、旅費に残額が生じた。また、2020年度に招待された国際研究集会において講演を行う予定だったが、これは延期され、これに充当されるはずであった旅費も使用できなかった。ここで、解構造を数値シミュレーションによって捉えるために、従来の予想よりも精度の高い数値計算を行う必要がある。現段階では確定できないが、数学的結果・シミュレーション結果・計算時間等を考慮し、ハイスペックPCの購入を検討している。
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