研究実績の概要 |
令和3年度は、査読付学術論文を1本出版した。「Phase transition of an open quantum walk, Takuya Machida, International Journal of Quantum Information, Vol.19, No.6, 2150028 (2021)」では、開放系離散時間量子ウォークの時間拡散オーダーについて解析を行った。開放系量子ウォークは、量子ウォークとは異なり、古典的な性質がしばしば観察される。開放系量子ウォークに対する長時間極限定理の研究結果は、量子ウォークに比べると少なく、未知な部分も多く残っている。この論文では、開放系量子ウォークの新しい性質を発見することも目標にしている。量子ウォークに1次元格子上で定義されるウォーカーは、局在化状態を初期状態として与えられ、時間発展を繰り返す。時間発展作用素は、あるパラメタで特徴づけられる。数値計算を用いて、ウォーカーの確率分布(各場所にウォーカーを観測するための確率分布)を観察すると、時間発展作用素のパラメタの値によって、確率分布が時間に対して拡散的(diffusive)あるいは弾道的(ballistic)に拡がっていくことが分かった。つまり、パラメタの値によって時間対する確率分布の拡散オーダーが変わる。これを数学的に証明するために、フーリエ解析を用いて確率分布の標準偏差の時間変化を解析した。さらに、それらの解析結果をまとめ、長時間極限定理を導出した。
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