研究課題/領域番号 |
19K03625
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
町田 拓也 日本大学, 生産工学部, 講師 (20637144)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 量子ウォーク / 極限定理 / 複写可能性 |
研究開始時の研究の概要 |
量子ウォークは、数学、物理学、量子情報の分野で活発に研究が行われており、複数の分野にまたがる研究テーマである。モデル自体を量子アルゴリズムとみなすことができ、量子コンピュータの基礎研究では重要な数理モデルとなっている。数学では、確率モデルであるランダムウォークの量子版として注目され、これまでに量子ウォークの数理構造が明らかにされてきた。物理学では、トポロジカル絶縁体などの物性理論への応用も試みられている。本研究では、量子ウォークのモデル間の複写可能性を数学的手法を用いて研究して、長時間極限定理を導出する。その結果、時間発展を繰り返した量子ウォークの確率分布の振舞いを明らかにすることができる。
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研究実績の概要 |
令和3年度は、査読付学術論文を1本出版した。「Phase transition of an open quantum walk, Takuya Machida, International Journal of Quantum Information, Vol.19, No.6, 2150028 (2021)」では、開放系離散時間量子ウォークの時間拡散オーダーについて解析を行った。開放系量子ウォークは、量子ウォークとは異なり、古典的な性質がしばしば観察される。開放系量子ウォークに対する長時間極限定理の研究結果は、量子ウォークに比べると少なく、未知な部分も多く残っている。この論文では、開放系量子ウォークの新しい性質を発見することも目標にしている。量子ウォークに1次元格子上で定義されるウォーカーは、局在化状態を初期状態として与えられ、時間発展を繰り返す。時間発展作用素は、あるパラメタで特徴づけられる。数値計算を用いて、ウォーカーの確率分布(各場所にウォーカーを観測するための確率分布)を観察すると、時間発展作用素のパラメタの値によって、確率分布が時間に対して拡散的(diffusive)あるいは弾道的(ballistic)に拡がっていくことが分かった。つまり、パラメタの値によって時間対する確率分布の拡散オーダーが変わる。これを数学的に証明するために、フーリエ解析を用いて確率分布の標準偏差の時間変化を解析した。さらに、それらの解析結果をまとめ、長時間極限定理を導出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次元格子上の開放系離散時間量子ウォークにおいて、時間に対する確率分布の拡散オーダーが時間発展作用素のパラメタによって変化することを証明した研究成果は、論文にまとめられ国際雑誌に投稿された。査読を受けた後、2021年10月に国際雑誌 International Journal of Quantum Information から出版された。コロナウィルスの影響で2021年8月と2022年3月に予定していたUniversity of Californiaの数学科を訪問して、F. Alberto Grunbaum教授と研究議論を行う計画はキャンセルしたが、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高次元系あるいはグラフ上の量子ウォークモデルの間にある複写可能性を研究するために、理論と計算機を用いてモデルを構成し、確率分布の極限定理導出を目指して研究を進めていく。モデルの構成や量子ウォークの解析には、数式ソフトウェアやコンピュータープログラミングも利用して、その数値計算結果をもとに理論計算に移行していく予定である。研究対象とする量子ウォークモデルの構築は、数学的な視点からだけでなく、量子物理学の視点からも行う。そのために、数学だけでなく物理学の論文や専門書も調査し、関連する先行研究から情報を集めながら研究を進めていく。高次元系あるいはグラフ上の量子ウォークモデルにおいて、モデル間の複写可能性を見つけることができた場合、これまでに行ってきた解析同様に、フーリエ解析を用いて長時間極限定理の導出を試みる。本研究を進めるためにアドバイスが必要な場合、量子ウォークや量子物理学の専門家と議論を行う。コロナウィルスの状況が改善され次第、University of Californiaの数学科を訪問して、研究を進めるための議論をF. Alberto Grunbaum教授と行いアドバイスを得る。研究進捗状況や成果は、国内外の研究集会に参加して発表する。得られた結果は、論文にまとめて国際雑誌に投稿する。同時に、ホームページ上で周知するなどして発信する。
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