最終年度の研究活動では、2023年3月にカリフォルニア大学バークレー校を研究訪問して、Norman Sheu講師と物理学における弦理論の分野に登場する微分方程式Deformed Yang-Mills equationに関する研究議論を行った。量子ウォークの分野では、Yang-Mills理論にアプローチしている研究はなく、Yang-Mills理論から量子ウォークに、あるいは量子ウォークからYang-Mills理論に新しいモデルを提案して、相互の研究を深化することを試みた。しかしながら、量子ウォークに関する新しい結果を得ることはできなかった。研究期間全体を通じて、査読付学術論文3本を量子情報理論系の国際雑誌から出版した。発表した研究成果は、1次元格子上で定義される量子ウォークの確率分布に対する長時間極限定理であり、いずれもフーリエ解析を用いて結果を得ることができた。特に、半直線上の量子ウォークに関する研究では、本研究課題のメインテーマである量子ウォーク間の相互複写性を発見して、長時間極限定理の導出に成功した。また、国内出版社から著書を1本(共著)出版した。国内招待講演は2件であった。国際的な活動は、コロナウィルス感染拡大の影響で、当初予定していた年2回のアメリカ出張による研究打合せが実施ができなかったが、2019年8月と2023年3月にカリフォルニア大学バークレー校の数学科を訪問して、F. Alberto Grunbaum教授、Norman Sheu講師と研究議論を行った。
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