本研究により、これまでは高精度な解析が困難であった、二次元フラストレート磁性体の有限温度物性を、テンソルネットワークを用いて解析する手法が確立された。従来から実用化されているテンソルネットワークによる基底状態の計算と、本研究による有限温度物性の計算を組み合わせることで、スピン液体等のフラストレート磁性体で実現する新奇秩序の物性を、基底状態で顕著な量子揺らぎ、有限温度で現れる温度揺らぎの、双方の視点から解析できるようになる。開発した手法により、特に、磁場中のキタエフスピン液体における熱ホール伝導度の温度依存性について、理解が進み、この成果は、今後のキタエフ物質の物性理解にもつながると考えている。
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