本年度までの研究においては、3次元N=4の超対称性を持つ場の理論のうち、特にランクが0である(つまり真空のクーロン枝とヒッグズ枝がどちらも0次元である)場の理論から出発すれば,ユニタリーではない位相的場の理論が得られるという成果を発表してきおり、世界的にも注目を集めてきた。この方法では、位相的場の理論が現れること自体は技術的には確認することができるものの、なぜ位相的場の理論が現れるのかは全く明らかではなく、より深い概念的な理解が求められる。 そこで本年度はこれまでのアプローチと相補的な方法として、3次元N=4超対称場の理論の位相的ツイストを実行することにより得られる位相的場の理論の研究に着手した。超対称場の理論の位相的ツイストについては4次元のN=2超対称ヤン=ミルズ理論のドナルドソン・ツイストに代表されるように長年の研究の歴史がある。しかし、今回の研究で扱う3次元N=4理論はゲージ場だけではなく物質場も含んでおり、得られる位相的な場の理論は「半単純ではない」理論になっていることが期待され、これまでほとんど研究されてこなかった理論である。本年度は研究年度を延長し、3次元N=4超対称箙ゲージ理論のいわゆるAツイストによって得られる位相的場の理論を考えた。特にこれらの位相的場の理論の境界に現れる頂点作用素代数と呼ばれる無限次元代数を系統的に構成し、さらに既存のW代数と呼ばれる代数との関係を議論した。これらの結果をカブリIPMUの現・元博士研究員三名との共著論文としてプレプリントarXiv:2312.13363 [hep-th]として発表した(現在数理物理学の専門雑誌にて査読中)ほか、さらに現在関連した論文を準備中である。このように、研究計画を延長することにより当初全く計画していなかった大きな成果が得られた。
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