研究実績の概要 |
Gongy D1S密度汎関数をはじめとする複数の密度汎関数と、反対称化分子動力学を用いて、12C+12C共鳴に関与するクラスター共鳴の性質を調べた。計算にあたっては、核間距離の拘束条件を課して変分を行うことで、12C原子核が回転励起したり、偏極したりする効果を、取り入れた。 その結果、重心系のエネルギーで1~2MeV程度に多数の共鳴が存在し、それらの崩壊幅はかなり小さいとの結果を得た。また、それぞれの共鳴に対して、基底状態からの単極遷移強度を求めて公開した。のちに、実験による検証が行われ、理論予測に非常に近いエネルギーに共鳴が多数存在することが示され、理論計算の妥当性が確認された。 さらに、求めた共鳴の性質から、核融合反応の反応率を予測した。得られた値は、従来の外挿値よりもやや小さなものとなった。この結果は、近年提唱されていたHindrance模型(低温での反応率の強い抑制)と、代理反応による見積り(低温での反応率の大きな増加)の双方を否定する結果となった。 この研究で求めた12C+12C核融合反応の反応率は、超新星爆発のシミュレーションに早速用いられており、原子核物理の発展のみならず、天体現象の理解にも大きく役立つものと期待される。また、この研究は、微視的理論模型によって、天体での核融合反応を評価する端緒となった。今後は、同じ方法を用いて、同様に重要な12C+16O, 16O+16O反応などの評価を続ける必要がある。
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