研究実績の概要 |
2020年にINFN-LNS研究所において10Be+α共鳴散乱実験を計画していたが、新型コロナウイルスの影響のため、2020年度に引き続き、2021年度にも実験を行うことができなかった。今後国際共同研究が可能になった段階で、改めて実験を行いたい。 一方で、10C+α共鳴散乱測定に関しては、計画より早く、2019年度に測定を完了したが、2021年度にはベルギーのP. Descouvemont教授、M. Sferrazza教授と相談を進め、データ解析を大幅に進展させることができた。今年度は、共鳴散乱の断面積の決定を完了し、いくつかの散乱角度に分割した形で、断面積のエネルギースペクトル(励起関数)を得るための解析を完了した。更にR-matrix理論に基づく理論計算で実験データをフィットし、励起関数に現れる共鳴の強度を得ることを目指した。現在ほぼ最終的な解析結果が得られており、14C原子核の鏡像系である14O原子核においても、対応する直鎖状態と思われる共鳴が観測され、それぞれの共鳴強度を粒子崩壊幅として正規化した形で導出することに成功している。この結果に対して理論的な考察を加えた上で、2022年度中には論文出版を目指す計画である。 また、関連する研究として、26Si+α共鳴散乱実験を、東京大学原子核科学研究センターのCRIB施設において、新規に遂行した。これは、より重い原子核系におけるαクラスター状態を観測し、原子核のクラスター状態の発現と、X線バースト天体における重要核反応である、26Si(α,p)反応への影響を調べるものである。測定は予定通り完了し、αクラスター状態の定量化に向けた解析を進めている。
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