研究課題/領域番号 |
19K03902
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
北口 貴雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30620679)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | X線 / 偏光 / 科学衛星 / 宇宙 / 天体 |
研究実績の概要 |
本研究は、X線偏光という新しい観測手法を実現して天体観測を行い、これまで不定だった天体の物理量を測ることを目的とする。X線偏光計およびそれを搭載する衛星の開発はアメリカが主導し、COVID-19 の影響はあったものの、最小限の遅れにとどまっており、衛星は今のところ予定通り 2021 年に打ち上げることになっている。 本年度は、天体からX線が放射してからどのような経路を経て地球まで届くのかを、モンテカルロ法を用いて数値計算し、対象天体のX線偏光観測の実現性や測定値からどういう物理量が引き出せるのかを見積もった。特に強磁場白色矮星を含む連星系では、磁極に形成される降着円柱から放射される熱的X線が、低エネルギー側では降着円筒自身で、高エネルギー側では白色矮星表面で散乱されて、弱く偏光されることを示した。さらに、この偏光度は、降着円柱のジオメトリに依存することが明らかになったため、今まで不明だった降着円柱の幅や高さを偏光で推測できることがわかった。そしてX線で同程度にひじょうに明るいが距離の異なる2つの白色矮星に対して、X線偏光観測予想を行い、降着円柱ジオメトリの違いがわかることを示した。これらの結果をまとめて、国際学会でポスター発表した。 並行して、天体からの高エネルギーX線偏光を気球から観測する計画を、アメリカおよびスウェーデンと国際協力して進めており、銀河系内ブラックホールを他の宇宙X線観測衛星と同時観測するための観測提案に応募し、一部は受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成否は、X線偏光観測という新しい手法の実現に依るため、X線偏光計を搭載する衛星の開発進捗が肝となる。衛星プロジェクトは、COVID-19 の影響はあったものの、最小限の遅れにとどまり、当初の計画通り 2021 年の打ち上げを予定しているため、本研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
衛星を打ち上げ、天体観測データの取得が始まれば、すぐにそのデータを解析し、結果を出せるように、偏光データ解析のノウハウおよびソフトウェアを整備する。また状況が許されるのであれば、偏光計を開発したイタリアか、衛星プロジェクトの元締めであるアメリカに長期滞在し、現地の研究者とデータ解析結果の妥当性を議論しながら、成果を出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 の影響により、当初予定していた長期の海外滞在がキャンセルとなったため。
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