研究課題
本研究は、X線偏光という新手法を用いて、これまで不定だった天体の物理量を測ることを目的とする。この IXPE プロジェクトは主に米伊日による国際共同で進められ、X線偏光計はイタリアが、それを搭載する衛星およびX線望遠鏡はアメリカが開発し、日本からは要となる増幅器を提供することで貢献した。衛星製作は、COVID-19の影響はあったものの最小限の遅れにとどまり、X線偏光計を載せたIXPE衛星は 2021 年末に地球低周回軌道に打ち上がった。本研究の最終年度では、IXPE衛星が観測した天体データを解析して、科学成果を出すことを行った。特に系内ブラックホール連星系でもっとも明るいCygnus X-1を約1週間観測したところ、X線は4%ほど直線偏光していて、その電場方向が電波で輝く宇宙ジェットの向きと揃っていることが初めてわかった。この観測結果を説明するには、X線はジェットと垂直な方向に拡がったプラズマから放たれ、それが降着円盤で散乱して、円盤を横から見ている我々まで届いたと考えられ、今まで解けなかったブラックホール近辺のプラズマの幾何情報を明らかにすることができた。これらの結果は、共著者として査読付き論文にまとめて学術雑誌に掲載し、日本語のプレスリリースも行った。上記の通り、X線偏光による天体観測を実現し、その有効性を実証できた。しかし観測中、Cygnus X-1は円盤の最内縁がブラックホールから離れたLow/hard状態にあり、ブラックホールのスピンを測定することには適していなかった。そのため、当初の目的であるブラックホールスピンと宇宙ジェットとの相関を取ることは、達成できなかった。今後は、スピン測定が期待できるHigh/Soft状態に移った時に、改めてCygnus X-1や円盤をほぼ真横から見ているGRS 1915+105の観測を行う予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 23件、 査読あり 22件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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