研究実績の概要 |
2019年度における研究実績は、次のとおりである: (1)近赤外線高分散分光観測の観測データを基にした新星イジェクタの特徴をまとめ、国際研究会"Golden Age of Cataclysmic variable stars, イタリア・パレルモ 9月2-7日"で発表した(招待講演)。この研究では、5つの新星のデータについて近赤外線スペクトルの輝線(主に水素のPa系列, [N II], He I 10830A)に着目し、それらの輝線プロファイル、それらの輝線が青方偏移した吸収線を伴うのかどうか、という主に2つの観点について、観測された新星のフェーズ毎に調査した。その結果、[N II] 10400Aの輝線がダブルピークを示すものと、そうでないものがあることが分かった。それらの新星の光度変化とその結果を合わせることにより、ダスト形成新星においてダブルピークを示す場合と示さない場合があることが分かった。これはイジェクタ内でのダスト形成領域が新星によって異なるという可能性を示唆する。今後より深く分析を進めることにより、従来のイジェクタ仮説を直接的に検証するよいデータになると考えられる。このようなことが近赤外線のスペクトルから示されたことはほとんどなく新奇性の高い結果である。 (2)バンドン工科大学(ITB)のワークショップ(インドネシアバンドン・9月27-28日)に参加し、観測協力体制を構築した。バンドン工科大学には歴史あるボスカ天文台があり、これまでも申請者は共同研究を行ってきた。申請者はそこで行われたワークショップに招待され、最新トピックを講演するとともに、ITBのHakim Malasan教授と今後の観測協力体制を確認した。彼らは申請者が行っている研究の一環として新星のモニター観測をサポートしてくれる予定である。
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