研究課題/領域番号 |
19K03939
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
坪井 昌人 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (10202186)
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研究分担者 |
三好 真 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 助教 (50270450)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 銀河中心 / ブラックホール / 中間質量ブラックホール / 超巨星 |
研究実績の概要 |
チリにあるアルマ望遠鏡を使用して銀河系中心SgrA*近傍を230GHz帯で観測しデータ解析を実行した。当該年度で得られた最大の成果はSgrA*から見かけ距離0.15pcの距離にあるコンパクトな天体IRS13E3の周囲に電離ガスのリングが回転していることを発見したことである。この運動がケプラー回転であれば、速度分解した撮像によりIRS13E3の内包質量は2x10^4太陽質量になる。このリングの中心天体は230GHz帯でコンパクトであることから、中心天体は中間質量ブラックホールと考えられる。この結果を日本天文学会欧文雑誌PASJで出版した。 IRS13E3が見かけ距離にあれば求まった質量はSgrA*の周囲に存在できる中間質量ブラックホールの上限値にほぼ一致する。上限値はSgrA*から実距離に依存する。しかしSgrA*から実距離は今までは推定できる良い方法がなかった。今回の観測で遠方からIRS13E3に流れ込む(ほとんど)電離したガス流の中に高い励起状態にある分子からの輝線を見つけた。この分子は0.4pc以内ではSgrA*周囲からの紫外線と宇宙線で破壊されてしまうと考えられるのでIRS13E3のSgrA*から実距離は見かけ距離とは大きく異なり少なくとも0.4pc以上であることがわかった。これもPASJで出版した。 また以上の研究の副産物としてSgrA*の周囲に存在するM0超巨星IRS7の電離ガスの十分な速度分解能を持った初めての撮像を行った。IRS7からの電離していない星風がSgrA*周囲からの紫外線と衝撃波により電離されて周囲ガスにより彗星状に吹き流されていることが確認された。これもPASJで出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つ目の中間質量ブラックホールについてはアルマの観測結果をまとめることでき、非常に簡単で信頼性のあるモデルで内包質量を求めることができた。 また中間質量ブラックホールのSgrA*から実距離は今までは推定する良い方法がなかったが、今回高い励起状態の分子の存在の有無を調べることにより、少なくとも下限値は決めることができるようになった。 2つ目の探査に重要な役割がある(別グループが行う予定の)アルマの観測が新コロナウイルスのため一年延期された。
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今後の研究の推進方策 |
2つ目の中間質量ブラックホールについての探査に重要な役割があるアルマの観測が新コロナウイルスのため一年延期されたので、今後1年間はアーカイブを利用してすでに発見している1つ目の中間質量ブラックホールについて詳細研究を進めることになる。 現在我がグループでは角度分解能0.4秒角と0.03秒角の電離ガスのデータについて解析が終わったが、この中間の分解能をもつ(別グループが取得した)電離ガスのデータがアーカイブにまわされる。これを合わせて使うと0.4秒角から0.03秒角まで切れ目がない高分解能高画質の撮像データになる。今後この合成データによる解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:査読論文の実際の出版が年度をまたいだ。 新型コロナのために天文学会2020年春季学会がWeb発表になった。 使用計画:上記の論文と現在審査中の論文のページチャージに使用する予定である。
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